第2部
スー
精霊の泉
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ユウリたちと出会ってからは彼らに頼っていた部分もあったけど、それでも食べ物のありがたみは理解しているつもりだ。
「一人旅なんかしてなくても、そういう大事なことはわかるでしょ?」
「あーもう、うるさいなあ! こんなときだけ先輩面するなよ!」
その一言に、私はカチンと来てしまった。
「先輩面なんかしてないよ!」
「二人とも、ケンカ、よくない!」
ジョナスが仲裁に入ろうとするが、私も姉として、冒険者としてのプライドがあるので、ここは引けない。そう思っていた矢先、
「待て、泉の様子が変だ!」
ユウリの声に、皆一斉に泉の方を向く。見ると、なぜか今まで普通の水面だったのが、突然光り出したではないか!
「な、なにこれ!?」
おそるおそる覗き込もうとしたが、ユウリに制止される。
「何が起こるかわからない。無闇に近づくな」
彼の言うとおり、少し離れたところで私たちは泉の様子を伺う。やがて、泉の中から放たれた光は収束し、泉の底からゆっくりと人影が現れた。そして水面から出てきたのは、驚くほど美しく光輝く女性だった。
「に、人間……?」
「いや、人間というより、これは……」
ルカの呟きに、戸惑うように答えるユウリ。確かに全身を輝かせながら泉の中から現れるなんて、人間には不可能だ。
動揺している私たちなど意に介さないといった様子で、アクアブルーの瞳を携えながら泉の上に立っているその女性は、透き通った肌といい、整った目鼻立ちといい、普通の人間なら誰もが感嘆の声を上げるほど美しい容貌をしていた。
彼女は私たちを眺めると、上質な銀糸のように煌めく髪を揺らしながら、無機質な表情で口を開いた。
「私はこの泉の精霊オルレラ。そなたが落としたのは、このローストチキンですか?」
「は?」
いきなり突拍子もないことを言われ、私の目の前に差し出されたのは、まぎれもなくローストチキンだ。水の中から出てきたというのに、香ばしい香りとともに温かい湯気が私の鼻をくすぐってくる。
「いや、あの、えーと、違います」
予想の斜め上の展開に、どこから突っ込んでいいのかわからず、私はとりあえず正直に返答する。すると精霊オルレラはローストチキンとともに泉の中に沈んでいった。
いったい何だったのだろう、と泉を覗き込んでみると、再びオルレラが現れた。
「わっ!?」
再び目の前に現れた精霊に対し、私は仰天して後ずさる。それでもオルレラは動じることなく私の方を向くと、再び尋ねた。
「それでは、そなたが落としたのは、このみずみずしいフルーツの盛り合わせですか?」
彼女の手には、山盛りのフルーツが抱えられていた。どれも新鮮でおいしそうではあるが、別に今それが欲しいわけではない。
「いえ、それも違います」
私はきっぱり断ると、オルレラはまたもフルーツと
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