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竜のもうひとつの瞳
第八話
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政宗様の問いかけにニヤニヤしながら笑うそいつは、絶対に伊達軍が自分達の要求を呑むと分かっていて話をしている。
うちはこういうのを見捨てられないってのをきっちり把握してるんだ。把握した上でこんな要求をしてきてる。

 「我々をこのまま逃がせ。追っ手などかけるなよ。子供は国教付近で逃がす……安い条件だろうが」

 奥州国外に逃げられれば正直に言うと厄介なことになる。
他国に逃げられて迂闊に手を出せば、それだけで含みありと取られて戦の口実にされることもあるだろう。
だから奥州内で片を付けなければならないのだが……さて、どうしたもんか。

 「安くはねぇな」

 こんなことを言い出したのは小十郎だった。誰もが一斉に小十郎を見る中、あの子は気にした様子も無く前に出る。

 「テメェらの言うことなんざ信用出来るか。大体、農民のガキなんざ人質にとってそんな要求が通ると思ってんのか?」

 「なっ……こ、このガキがどうなってもいいってのか?」

 思わぬ反応に明らかに向こうが戸惑っている。
でも、戸惑ってるのはこっちも同じで、一歩間違えればいつきちゃんの命が無いってのに……何を考えてるのかしら。

 「俺を代わりに人質にしろ。俺は竜の右目だ。奥州に来てんだ、聞いたことくらいはあるだろう。
……農民のガキを人質に取るくらいなら、俺の方が十二分に人質の役割を果たせる。
おめぇらの国に連れて行けば、利用価値は十分だろう?」

 こんな小十郎の申し出に政宗様が止めに入ろうとするが、小十郎はそれを制して聞こうとしない。
私も手を出さずにこの様子をただ見守っている。小十郎のことだ、何かしら思惑があるというのは分かる。

 「……ふん。まぁ、いいだろう。なら、刀を捨てて……その具足も全て外してこちらに来い。
お前が来たらガキは放す」

 どうやら小十郎を人質にとった場合のメリットを考えて欲が出たようだ。小十郎の申し出を素直に聞き入れている。

 小十郎は奴らに要求された通りに刀も具足も全て外し、雪の上に放り投げる。

 「……さ、寒ぃ」

 この小十郎の呟きにはうっかり笑いそうになったけど、あえてそこは黙っておいた。

 この子、雪国育ちのくせして結構な寒がりで、あの具足の裏側に防寒対策に毛皮なんか仕込んでたりするのよね。
まぁ、冬限定だけど、立派に防具も防寒具の役目を果たしてるもんだから、寒くて仕方が無いってのは分かる。
冬場なんか、休みの日は一日中布団頭から被って寒さに身を震わせてるくらいだしさ。
もう絶対に人には見せられないような情けない様を見せてるんだもん。
こんな雪の中でよく頑張ってる方だよ。

 小十郎が若干震えながら連中に近づいていく。小十郎がその男の前に立ったところでいつきちゃんを解放
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