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竜のもうひとつの瞳
第七話
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危ないからアンタも近づかないように」

 「はっ」

 私の近くでふわふわと浮いている銃弾や矢をいつきちゃんが驚いた顔で見ていたけど、
それは向こうも同じで酷く驚いた顔をして見ている。
それでも懲りずに何度も撃ってくるんだけど当然結果は同じで、銃弾や弓はふわふわとその場に浮くばかりで私に掠りもしない。

 「アンタら、何処の軍の人?」

 「何言ってんだよ! 蘭丸達は伊達軍だ!」

 蘭丸、って言うのね。あの子供。……ん? 蘭丸? 何かどっかで聞いたことがあるような……。

 「伊達軍ねぇ。悪いけどもさぁ、伊達軍に女子供はいないんだわ。
野郎ばかりのむさ苦しい連中ばっかで、息が詰まりそうなのが奥州の覇者、伊達家なんだよ。……で、アンタら何処の人?」

 こんなことを言うと、途端に二人が表情を引き締めて構えを取る。
どうやらこっちの素性に気付いたらしい。そりゃ、こんな聞き方してりゃ伊達の関係者だってのは予想がつくだろうし。

 「ふん! 蘭丸達は伊達軍だって言ってるだろ! 濃姫様、こいつとっととやっつけちゃいましょうよ!
農民甚振ったって楽しくないです!」

 「蘭丸君!」

 濃姫に蘭丸……って、やっぱり織田軍か! 織田信長に仕えた森蘭丸とその正室である濃姫は有名だもん。
歴史に詳しくない人だって、そのくらいは知ってるくらいに有名人だもの。そうか、一揆を嗾けたのは織田の連中か。

 ちょい待て。つか、今、楽しいとか言った?

 「なるほど、織田の軍ってわけね。
奥方様と織田信長の寵童がわざわざこんなところに来るなんて……余程余裕があると見えるわね」

 天下統一に王手をかけている織田信長は、西国のほとんどを制圧して関東攻略に乗り出そうとしていると聞く。
最近じゃ徳川と同盟を結んだとも聞くし、関東攻略へ出向くのも時間の問題であるのは予想がついていた。
が、奥州にこれほど早く手を出すとは、正直予想外だった。
関東だってまだ攻略前だってのに、まさか奥州に手を出してくる余裕があるなんて思ってもみなかったから。

 「伊達の仕業に見せかけて兵を向けたのは、奥州内部に混乱を招くのが目的だった……と、考えて差し支えないかしら。
一揆衆を作って伊達と争わせ、奥州内部が混乱して国力が落ちた隙に一気に攻め込んで我が物にしようと。
大方そんなところかしら」

 まぁ、この程度のやり口は一般的なものだ。別に批難するようなことでもないし、逆に褒められることでもない。
ただ、気に入るかどうかと言えば、はっきり言って気に食わない。
こういう信頼関係を崩されるようなことをやられるのが一番癪に障るのよね。

 でも、うちに成りすますにしても関東を抜けていきなり何事も無かったかのように奥州に入るのは無理
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