第二部 1978年
ソ連の長い手
ミンスクハイヴ攻略 その2
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極東の果てにあるハバロフスクより遠く離れたドイツ・ベルリン
そこにある議長公邸で、男達が密議をしている最中であった
「何、GRUの連中が我々に協力を求めて来ただと……」
背広姿の男は、正面に立つ40がらみの軍人の顔を見つめる
「この期に及んで、どう言う積りかね。
無論、断るのであろう、シュトラハヴィッツ君」
折襟の勤務服に朱色の将官用階級章を付けたシュトラハヴィッツ少将
彼は、軍帽を右脇に挟み、立ったまま男の意見に頷く
「同志議長、小官も同意見です」
灰色がかった髪と綺麗に整えられた口髭
アイデンティティーの一つであった蓄えていた顎髭は、綺麗に剃り上げられていた
「居丈高に振舞っておきながら、都合が悪くなると平伏して泣きついて来る……。
あまりにも身勝手な話ではないか」
窓際より、降り頻る雨を眺める
「我々は今、西側に入ろうと努力している矢先に、水を掛けるような真似をするとは……」
ソ連支配下の東側は、困窮に喘ぐ暮らしを余儀なくされていた
社会主義という実情を無視した経済政策により、貧困状態に長く留め置かれざるを得なかった
国民の間にある怨嗟は凄まじく、其の事を各国の指導部は薄々感づいてはいた
だが、国家体制維持の為、無視する施策を取り続けてきた
今、ソ連の弱体化によって東欧諸国の政治的態度は変化しつつある
GRUは、その点を読み間違えていたのだ……
雨は次第に強くなり、吹き付ける様に降り続く
まるで独ソの関係を表すかの様に、男には見えた
「国家保安省の所にはKGBから連絡もないし、外交ルートを通じての話も一切ない。
アベールの所に、ソ連外務省関係者が出入りしているが……」
男の言葉に、彼は驚愕した
ソ連経済圏の一翼を担う東ドイツの経済官僚が、ソ連政府関係者と連絡を取り合うのは珍しい話ではない
外交ルートの他に、ソ連外務省と個人的な関係を結んでいるアベール・ブレーメ
女婿ユルゲン・ベルンハルトとの縁で敵対関係にはならなかった
一介の経済官僚とはいえ、そのような人脈を持つ男
考えるだけで空恐ろしくなる……
その娘に、禽獣が如く飼いならされているベルンハルト……
未だ真意を量りかねる面も多い男、末恐ろしさを感じた
「西との初顔合わせ……、誰を行かせたのかね」
男の言葉に、我に返ったシュトラハヴィッツ少将
少し間を置いた後、ゆっくり答えた
「同志ベルンハルト中尉、同志ヤウク少尉です」
何時もの如く、タバコを差し出して来る
青色の『ゴロワーズ』の紙箱を受け取ると、一本抜きだす
「何故、同志ハンニバル大尉にしなかった……」
軽く会釈をして、箱を男の手元に返す
両切りタバコを口
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