第五十話 たい焼きとカラオケその十一
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「絶対中三の頃の水着は入らないわよ」
「まさか」
「絶対にそうよ、だからね」
「新しい水着をなの」
「そう、買ってね」
そうしてというのだ。
「着てね、水着も遊ぶ時に必要だしね」
「それでなのね」
「買いましょう、今度はね」
「ううん、水着まではね」
そこまではとだ、咲は愛に考える顔で答えた。
「実はね」
「考えてなかったの」
「今まではね」
「中学校の時のままでって思ってたの」
「そうだったわ」
「けれどよ」
愛はその咲にさらに話した。
「もうね」
「女の子なら」
「毎年一着はよ」
それだけはというのだ。
「買ってね」
「そして着るのね」
「そうしてね」
「それじゃあね」
「何なら一緒に買う?水着も」
愛は自分から提案した。
「そっちも」
「水着もなの」
「私はもう今年の水着買ってるけれどね」
「もう買ったの」
「春のうちにね」
「それって早くない?」
「いや、水着ってもう早いうちになのよ」
その春のうちにというのだ。
「買うものよ」
「そうなの」
「夏に着るけれどね」
「夏に買うものじゃないのね」
「その前にね」
着る季節の前にというのだ。
「もうね」
「買うものなのね」
「選んでね」
「そうだったのね」
「夏は春からはじまってるのよ」
愛は笑ってこうも言った。
「既にね」
「だからサングラスや麦わら帽子も買ったのね」
「夏服とね」
「それで今度はなのね」
「水着もよ」
こちらもというのだ。
「買いましょう」
「それじゃあね」
「ええ、水着も買いましょう」
愛はこちらの話もした、咲は彼女のその言葉に頷いた。この時はそれだけだったがこれが思わぬ大きなことになることは彼女はまだ知らなかった。
第五十話 完
2022・2・8
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