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竜のもうひとつの瞳
第三話
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 「いつきちゃん! しっかりするだよ!」

 「いやだ!! おっとう!! おっかあ!! なして……なしておらだけ置いて……なんで逝っちまっただ!!」

 叫ぶように泣く女の子に誰も声を掛けられずにいる。
そりゃそうだろう、こんな状況、大人だって言葉にならないもん。
ましてやこんな小さな子に何を言ったらいいのかなんて、分かるはずもない。

 暴れる女の子の前に立って、私は何も言わずにその子を抱きしめていた。
それでも女の子は暴れて、私を殴りつけて離れようともするけど、その子を離すことは絶対にしなかった。

 「ごめんね」

 この言葉に女の子の勢いがぴたりと止まる。

 「助けられなくて、ごめんね」

 ただ涙を零して呆然と私の顔を見るだけだった女の子が、また顔を大きく歪めて叫ぶように泣く。
だけど今度は暴れるんじゃなくて、私にしっかりとしがみ付いて泣いている。
私はただ、この子が泣き止むまで抱きしめて背を擦ることしか出来なかった。



 女の子の名前はいつき、話を聞いてみると亡くしたのは両親じゃなくて育ての親だったらしい。
どうも元は捨て子だったようで、いろんなところをたらい回しにされて育ってきたのだとか。
銀色の髪が変わっているからと鬼の子だと言われて除け者にされ、
どんなに頑張って家の手伝いなんかをしても気に入ってもらえずに肩身の狭い思いをしていたところでようやく出会った、
本当の両親のように優しい養父母だったと聞かせてくれた。

 「姉ちゃんのせいでねぇ……、姉ちゃんは村を助けようと必死に頑張ってくれただ。おら、それを知ってるから」

 落ち着いたところでいつきちゃんはそう言ってくれる。結果的に村は助かったけれど、この子の拠り所は無くなってしまった。
きっとまた、何処かへと移っていくのだろう。それがこの時代のあり方なのは分かるけど、胸が痛かった。

 「行き場が無いなら私のところに来る?」

 せめてもの罪滅ぼしに、という気持ちがあったのかもしれない。でも、いつきちゃんは首を振って、

 「おら、ここに残る。おっとうとおっかあが好きな村だ。おらもここで、村を直す手伝いをしていく。
……それに、みんなもおらのこと、気味悪がらないで置いてくれるから」

 そう、少し寂しそうに言っていた。

 「そっか」

 いつきちゃんの頭を軽く撫でて、私は立ち上がる。
周りも孤児になってしまった子供達を育てるつもりでいるようだし、任せても大丈夫なのかもしれない。

 「辛くなったらいつでも城においで。片倉景継、って言えば分かってくれるから」

 「かげつぐ……? 姉ちゃん、男だったのか?」

 やっぱり疑問に思いますか。そりゃそうよねぇ、女で景継はないもん
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