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竜のもうひとつの瞳
第二話
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うで、
足場が悪いことも重なってずるずると押されるように後退してしまう。

 「皆、高台に避難しろ!! 土砂に飲み込まれるぞ!!」

 小十郎の咄嗟の一言で呆然としていた連中が我に返り、
先程まで村がどうとか何とか言っていたとは思えないほどの足の速さで逃げていってしまった。

 全員が退避したとは言い切れないこの現状、完全に退避するまでは動くわけにはいかない。
ずるずると下がっていく私の身体を、誰かが後ろでしっかりと支えてくれた。

 「小十郎!? 政宗様は!?」

 「他の者に託してございます。それよりも姉上、集中して下さい。
押し留めるのではなく、村の左右に土砂を流すように出来ますか。
おそらく、少しは負担が軽くなると思います」

 アンタここで何をしてんのよ、と言いたかったけれど、正直に言うとそんなこと言える余裕が無い。
かなりの婆娑羅の力を使ってるもんだから、集中力を欠いたら想像もしたくないような事態になっちゃう。

 「全員退避したか、様子を見てて。抑えきるのは無理だから、逃げたら私達も逃げるから」

 「承知しました」

 兵達も村人達も粗方いなくなってはいるが、それでもまだ人は残っている。
腰を抜かして動けなくなっているような人もいる。
益荒男と言われる伊達の連中だって迫り来る土砂に役目も忘れて逃げ出したんだし、身動き取れなくなるのはおかしなことじゃない。
でも、とっとと逃げろと思ってんだけどね。

 土砂に混じって石が村に転がってくる。何もかもを防ぎきるのは無理で、先程から大粒の石が重力の壁を抜けて落ちてくる。
それが私や逃げ切れていない人達に当たらないように、小十郎が雷の力を器用に使って粉砕しているものの……おそらく、これは小十郎がもたない。

 この子の婆娑羅の力は割合応用が利かなくて、せいぜい外に放出するのは雷を飛ばすくらいが剣を使わずに出来る限界だ。
いつもは身体能力を高める方に使っているってのに、それを狙ったように粉砕してるってことは
かなりの精神力と体力を削ってコントロールしてるってことだから、限界が来るのも目に見えている。

 腰を抜かしていた人達がようやく立ち上がって、我に返った人に助けられながら逃げていく。
やっと全員いなくなったか、などと少し安心したところで土砂に飲まれかかっていた家から一人の女の子が出て来た。

 まだ九つとかそれくらいの子だろうか。多分、親に危ないから家にいろと言われたのかもしれない。
外が急に騒がしくなって、様子がおかしいから出てきたのかもしれない。
あんな子ほっといて逃げたってわけ? ……そういえば、子供の姿が無かったけど、まさか……まだ家の中に残ってるとか?

 「小十郎! 動ける!? ひょっとしたら家の中に小さ
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