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竜のもうひとつの瞳
番外編1〜いつきという少女 前編〜
第一話
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出来ないから、って意味ね。

 まだ家督を継いで間もないこともあって、こうした緊急性を要する事態に的確な判断を下すことを躊躇うことがある。
政宗様は完璧主義なところがあるから、正しい判断を探して泥沼に嵌っちゃうのよね。
そういう時は大抵私達が呼ばれて話を聞くわけだ。まぁ、大体は話を聞いているうちに本人の中で整理がつくんだけど……

 「俺は助けに行きてぇ。だが、助けに向かってもこの雨じゃどうにも出来ねぇ。
それに迂闊なことをやって更に被害を出すわけにもいかねぇ……どうしたらいい」

 こうしたらいいんじゃないっすか、なんて言える正しい解答はないし確実な手段も無い。
大体現代だって救出作業は難航するのに、この時代じゃ余計にそうだ。
行って作業をしても絶望的だってのも考えるまでもない。
だからと言って何もしないわけにはいかないし、それで割り切れるんなら人間じゃない。

 悩んでいる間にも時間はどんどん過ぎていく。時間が過ぎれば過ぎるほど状況は悪くなる。
苦渋ではあると思うけど、今は即決を促される事態だ。二の足を踏んでいる場合じゃないしじっくり話を聞いてやる暇も今回は無い。
さて、どうしたものかと考えて小十郎の顔を見る。すると小十郎も私の言いたいことを察してくれたのか、何も言わずに小さく頷いていた。

 ……ま、ここで動かなくて後々後悔するよりかはいいか。政宗様の気持ちに後押ししちゃっても。

 「政宗様、助けるのは生き埋めになった人ばかりではないでしょう。まだ、助ける人が他にもいるでしょ?」

 そう言ってやれば、政宗様ははっとした顔をして俯きがちであった顔を上げた。

 「そうだった……まだ無事な連中も助けなきゃならなかったんだ。
Shit! 俺としたことが、目先の被害ばかりに捕らわれて足踏みしちまったぜ。
……Thanks、景継。二人とも、兵を率いて最北端の村へ向かう。早急に準備を整えろ!」

 「はっ!」

 やっとどうするのかを決めた政宗様の指示に従って、私達は早急に準備を進める。
それから一時も経たないうちに城を飛び出して、豪雨の中馬を走らせて最北端の村へと向かった。

 これ以上被害が出なければ良いのだけれど。気持ちとは裏腹に何も出来ない以上、そう願うしかなかった。
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