番外編1〜いつきという少女 前編〜
第一話
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はございませんな」
小十郎の畑は城から離れた高台にあり、仮に川が決壊したとしても水にやられることがないような場所に作られている。
まぁ、その分水遣りは大変なんだけど、こういう時には被害を被らなくて良いのよね。
その小十郎の畑ですら雨にやられてそんな状態だとするならば、それよりも低い位置にある村は更に被害が出ていると考えていい。
「一揆が心配だわね。アンタの畑ですらそんな状況なら、尚更」
「……でしょうな。少しばかり近隣の村の様子を見て参りましたが、何処も作物は……」
渋い顔をして口を閉ざす小十郎に、私は小さく溜息を吐いた。
現代であるのならば対策の立てようもあるかもしれないけど、いくら世界観がおかしいとはいえここは戦国時代。
やれることは極端に限られてる……っていうか、ほとんど無い。
せいぜい出来るのは雨が止むのを神やら仏やらに祈るくらいだ。
婆娑羅の力じゃどうにもならないしねぇ……こればっかりは、雨が止むのを待つしかないのよね。
一体何時まで雨が続くんだろう、そんな風に思っていたところで兵の一人が小十郎の部屋に飛び込んででくる。
「すいません、小十郎様! 景継様! この雨で土砂崩れが起こったそうです!!
最北端の村がそれに巻き込まれて生き埋めになってる奴が大勢いるらしいっす!!」
「何……?」
「すぐに対策を立てなきゃならねぇから筆頭が御二人を呼んで来いと!」
この報告に私達は揃って部屋を出て、政宗様の元へと急ぐ。
偵察に出ていた連中から報告を詳しく聞いていると、最北端にある村で大規模な山崩れが発生して生き埋めになった村人が多数いるとか。
しかもまだ山が崩れる気配があって、偵察に出ているうちの何人かが残って救助に動いてるらしいけど、その救助も難航していると聞く。
一刻も早い対策が求められるけれど、この雨にその状況では身動きが取れない。
下手に動けば二次災害の可能性だってある。
それが分かっているからこそ、政宗様も助けに行くぞ、と迂闊に言うことが出来ずにいる。
政宗様は民が安心して暮らせる世の中にする為に戦を起こしているのだから、この危険な状況をあっさりと見殺しにすることは出来ない。
けれど同様に、伊達の人間を農民を優先して見殺しにすることも出来ないからこそ判断を下せずにいるわけだ。
この状況、見捨てれば確実に一揆は起こる。見捨てなくても一揆が起こる可能性はぐんと高くなるだろう。
実際にこうして被害が出てしまっている以上は。
「……小十郎、景継。どうしたらいい」
悩む表情を見せる政宗様の問いかけに、私達は答えられない。助けに行けとも見殺しにしろとも言うことが出来ない。
答えに詰まったんじゃなくて、迂闊な返答が
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