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ボロディンJr奮戦記〜ある銀河の戦いの記録〜
第62話 エル=ファシル星域会戦 その6
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トスキンで僅かに頬骨を大きくして、眉をかなり抜いて、髪はヴィッグで顎下までのセミロング。目付きの悪い、いかにも門閥貴族の手下でございますという形に、俺は大きく溜息をついた。帝国語と貴族仕草についても、アニメに登場している青年貴族たちの真似しつつトレーニングを積んだのだが……
「若干のフェザーン訛り以外は間違いありません。くれぐれもその姿でハイネセンを出歩かないでくださいね。間違いなく撃ち殺します」
 と評価されるありさまだった。一応、アップルトン准将や参謀達にもこの姿を披露したが、やはり反応は同じ。特にアップルトン准将は俺の頬を三度ばかり軽く叩いてくれたりもした。

 そんななんちゃって帝国貴族になった俺は制服こそ同盟軍少佐だが、そのままの顔で作戦会議や打ち合わせに出るものだから、戦艦カンバーランドで事情を知らない将兵に遭遇するたびにフィンク中佐が俺をかばい喧嘩寸前まで発展し、ついには艦長の名前で艦内にお触れが出る始末。それからは出会う度に『坊ちゃん少佐』と呼ばれることになった。

 いずれにせよその間にも準備は進む。嚮導巡航艦エル・セラトの予備通信室には、貴族士官が使っていたと思われる損傷した帝国軍巡航艦から移設された通信室が組み込まれ、鹵獲した帝国軍戦艦トレンデルベルクの通信室下には同盟軍の演習用シミュレーターが組み込まれた。有人となる三四隻には白兵戦部隊が分乗し、作戦開始と同時に一目には付かないスペースやミサイル格納庫に隠れる。

 そして五月七日。最終的な打ち合わせを終えた俺は、戦艦カンバーランドから嚮導巡航艦エル・セラトに移乗した。





 八二時間後、嚮導巡航艦エル・セラトは惑星エル=ファシルよりも外の軌道にある、便宜上エル=ファシルXと呼ばれる大規模ガス惑星の表層内部に船体を浮遊固定し、パッシブ態勢に入った。残留する本隊所属の哨戒部隊警戒網に引っ掛かった感じすらない。

「密輸業者が使うルートの一つです。超長距離索敵に使われる重力波変異計測は、この惑星の自転速度の影響で台風や陰になる部分の値が複雑に変動する為、役に立ちません。重点的に艦を動かしてこまめに巡視しなければならない場所ですが……ビュコック提督もそこまでは気がまわってないのでしょう」
 ユタン少佐は大きく溜息をついて言った。
「このルートは星系外部から侵入する時には有効な手段ですが、惑星エル=ファシルから出る時は、逆にXからの重力波差異を反射で検知できるので、まったく使えません。私とこの船は帝国軍に追い回された挙句、かろうじてここに逃げ込めたのは幸いでした」

 他の艦は追撃中に撃破されるか捕らえられるかしたらしく、所属する巡航隊では、エル・セラトだけが唯一生き残った。それもエル=ファシルXの重力に引きずり込まれるような『死んだふり』で、辛
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