第九十三話
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あの世界でいろいろ鍛えられた、とは言っても……やっぱり、独りで過ごさなきゃならないのは寂しいなぁ……。
そんなことを考えながら、私の意識がすっと消えていった。
係長が連れて来たあの女の人が消えた後、私は少し呆れた顔をしてまたその場に姿を現した。
「本当のこと、言っちゃえば良かったんじゃないですか? 生き別れた双子の弟です、って」
「い、言えないよ。だ、だって、げ、現実の世界じゃ、ぼ、僕は……」
養子に入った先の両親とは折り合いがつかず、学校では苛められ……と、
人生に悲観して十歳の時に飛び降り自殺を図った係長は、いろいろあってゲーム世界を管理する神様として君臨することになった。
それから十二年、仕事をする傍らで神の力で探り当てた生き別れのお姉さんの様子をじっと見守ってきたらしいんだけど。
あんな様子を見ていて少しでも希望を持って生きてもらいたかったらしくて、
私が散々に怒ってもゲームの世界から連れ出すことを許さなかった。
自分は絶望して自殺しちゃったけれど、お姉さんには同じにはなって欲しくはないと言って。
でも、いよいよ世界の均衡が揺らぎ始めてバグが出たのを見て、放っておくつもりだった係長は
あの人とコンタクトを取ってストーリー通りに話を進めるようにと言った。
最後まで連れ出さなかったのは、途中で連れ出して現実世界に戻したとしても何も変わらなかったんじゃないのかって係長の判断。
面識の無い姉なんかをよくもまぁ愛せるものだと私は呆れもしたけれど。
それでも話の筋を変えようとちょこちょこ動くあの人には困ったもので、
松永の姿を借りて忠告したり、キャラを操作してお市を家康に引き取らせてみたり、裏では相当話を修正する為に動いたりして
話の筋をどうにか戻そうと努力したんだけど……結果はあの有様。
お陰で報告書と始末書どんだけ書かされたことか。課長には大目玉食らったしね。
「……で、まだ一つ問題が残ってるでしょ? そっちはどうするんですか。転生させるにも空きがないんだから」
「う、うん。そ、そっちは大丈夫。は、話はつけてきたから」
「……話をつけてきた?」
ふわりとワンルームに現れた魂に、係長は穏やかに笑っている。
まぁ、人から見たら不気味な笑みにしか見えないんだろうけども。
係長がつっかえながら事情を説明する。それにあの人は驚いていたけれど、係長の提案を聞いて私も驚いてしまった。
本当にそれで良いのかと二人揃って詰め寄ったのは言うまでも無く、結局それで話が纏まってしまった。
あの人も随分と渋い顔をしていたけれど、係長にお礼と必ず不幸にはさせないと言って現世へと旅立って行った。
本当、係長って馬鹿だ馬鹿だと思ってたけど、本当に
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