第九十二話
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話す家康さんは笑っていても何処か寂しそうだった。
いくら利用しようと敵対関係になったとはいえ、元は同じところにいたんだもんね。
二人の間柄がどういうものかも私には分からないけど、いろいろ思うところはあるんだろう。
皆、不幸になることもなく穏やかに過ごしている。誰もが泰平の世を喜んでいた。
ゲームの世界なのに未来があるってのも変な感じだけど、でもまぁ、過去があるんだから未来だってあるはずだよね。
こんな感じで穏やかに歳月が過ぎ、そしてとうとうこの世界を離れる日が来た。
六十を前に、小十郎が体調を崩し床に臥せる日々が続いた。
体調不良を訴えて倒れたのが三ヶ月くらい前の話で、そこから急速に体調が悪化している。
史実の小十郎が死んだのも、確か六十になる前だったような気がする。
だから、周りが何も言わなくてももう後が無いってのは何となく予想がついていた。
連日見舞いに訪れる政宗様は、小十郎には気丈にもいろんな話をして、お前がいなくなると仕事が進まなくなるからと笑っていた。
けれど、私の前になると本当に悲しそうな顔をしてまだ逝かないでくれと縋るから、
そのギャップにいけないとは思いつつ笑ってしまったりもした。
記憶を共有しているって話は野暮だからと隠していたんだけど、
私に見せるこんな政宗様を小十郎も見ていて、何ともいえない気持ちになっているのを知っている。
そして最後の日、いつものように縋る政宗様に私は穏やかに話をする。
「人は、必ず死ぬもんです。これも仕方が無いことですよ……
政宗様、私や小十郎がいなくなっても嘆いて立ち止まらないで下さい。
いろんなことがあったけど、私はこの世界に生まれて来られて良かったと思ってるんですから。
……“私”としては家庭は持てなかったけど、小十郎がその分幸せをくれた……
子供達も私を小十郎と同様に親と慕ってくれたし、夕も私を家族として受け入れてくれた……もう十分です。
十分幸せを貰いました」
「馬鹿野郎! 何でそんな諦めたようなこと言うんだよ、俺はまだ、お前に女としての幸せをくれてやってねぇぞ!!」
分かってないな、何十年もそうやって思ってくれただけで私は十分なんだ。
そういう気持ちが長く続くと知っただけで、もう十分なんだから。
ずっと想い続けてくれた貴方には酷だったかもしれないけれど。
揺らいでいく意識と抗えない眠気に、私は自分の死を悟る。
「……そろそろ私とはお別れみたいです。
……小十郎に代わりますから、こんなに早く死ぬなんて不忠者め! くらい言ってやって下さいな」
「おい、馬鹿、待て」
慌てる政宗様に、私は軽く笑う。
政宗様、貴方には分からないかもしれないけれど……独り
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