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ウルトラマンカイナ
過去編 ウルトラクライムファイト
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る前にいくらでも手が打てたのにッ……!)

 一方、雄介は自分を刺した有彩を責めようとはせず、むしろ罪悪感すら覚えていた。彼女から発生していたマイナスエネルギーに気付けなかったことだけではない。
 彼女をここまで追い詰めたのは自分1人だけではないが、最後の最後で「溢れさせた」のは間違いなく自分なのだと。

 そんな彼が、震える足に力を込めて立ち上がろうとする姿に、有彩は胸を打たれ――再び包丁を握り直していた。

「……あ、あはは、そうか、そうなんだ。雄介先生は、お腹刺されたくらいじゃ諦めてくれないんだ……! そりゃあそうだよね、今までずっと私達を守ってくれていたウルトラマンなんだもん……! これくらいで止まってくれるわけなんてないッ……!」
「有彩……!?」
「ごめんね先生、気付かなくて。先生を止めるなら……足の腱を切ればいいんだって!」

 怪獣の発生を止められなかった責任だけは、ウルトラマンとして取り返さねばならない。そんな雄介の力強い意志をその眼差しから察していた有彩は、彼の足を動けなくしようとしていた。

「そこまでだッ! 大人しくしろ、毒ヶ丘有彩ッ!」
「あうッ!?」

 だが、その刃が雄介の足に届くことはなかった。この外廊下に駆け付けて来た1人の警察官が、有彩の手から包丁を叩き落としてしまったのである。
 その警察官――小森(こもり)ユウタロウ巡査は、鮮やかに有彩を投げ飛ばすと、瞬く間に彼女の両手に手錠を掛けてしまった。

「うあぁっ!」
「小森巡査……!? いや、あなたは……!」

 ユウタロウとは以前から顔見知りだった雄介だが、その時の彼は普段とはあまりにも雰囲気が違い過ぎていた。間違いなく自分が知っている小森ユウタロウだというのに、顔付きが明らかに「別人」だったのである。

「全く……詰めが甘いぞザイン。灯台下暗し、とはよく言ったものだが……注意深くこの娘を見ていれば気付けていたはずだ。女心に鈍いからこういうことになるのだと知れ」
「クライム教官……なのですか!?」

 その正体は――ウルトラマンザインの師匠、ウルトラマンクライムだったのだ。小森ユウタロウに憑依していた彼は、弟子の活動を地球人の視点から視察していたのである。

 怪獣が現れても一向に弟子が駆け付けて来ないことから事態を察した彼は、1人の警察官としてここまで急行して来たのだ。
 彼は暴れようとする有彩を強引に押さえ込み、完全にその暴走を封じている。うつ伏せに取り押さえられた黒髪美少女の爆乳が、床に押し付けられむにゅりと形を変えていた。

「ぅうっ! 離せこのっ、このおぉッ!」
「待ってくださいクライム教官、その子は……!」
「あうぅうッ! 離せ、離してよおッ! 私は、私は……雄介先生を止めなきゃいけないのに
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