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ウルトラマンカイナ
過去編 ウルトラクライムファイト
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て先生、私にお腹刺されて……ひどい怪我してるんだよ!? そんな身体で戦うなんて無理だよっ! だって私、そのために先生をっ!」
「有彩……」

 マイナスエネルギーは怪獣を生み出すだけでなく、発生源の人間が持つ負の感情をより増幅させて行く作用がある。自我が無くなるのではなく、自我がより強く先鋭化されたものが行動に顕れるのだ。
 つまり雄介を刺したという有彩の行為は、マイナスエネルギーだけのせいだとは一概には言い切れないのである。雄介という「男」を欲する、「女」としての倒錯的な愛情。それこそが、有彩をこの凶行に走らせた真の原因なのだから。

 ――不登校に陥ってからも、成績を落としたくはないと悩んでいた優等生の有彩にとって、雄介は単なる家庭教師という枠には到底収まらない大きな存在となっていた。
 都内最優と評判の家庭教師だった彼は、深刻な男性不信に陥っていた有彩の心をも少しずつ解きほぐし、やがては家族のような絆を育んでいた。有彩の窮状を儚んでのその行動が、結果として「仇」となったのである。

 雄介を家庭教師としてではなく、「男」として見るようになっていた有彩は、いつしか「女」としての自分を求めて欲しいと願うようになっていた。

 そして、教師と生徒としての日々を共に過ごす中で、雄介が現役(いま)のウルトラマンであると知っていた彼女は。雄介を戦いから遠ざけたいという想い故に、彼を包丁で刺したのである。
 当初こそ純粋にウルトラマンとしての彼を応援していた有彩だったが、戦いの日々が激しさを増して行くにつれて、不安を募らせるようになっていた。その不安こそが、莫大なマイナスエネルギーの源泉となったのである。

 言葉で止められないのなら、戦えない身体にすればいい。
 そんな暴挙に出るほどにまで、マイナスエネルギーにより自制心を失っていた彼女は、短絡的な衝動を抑えられなくなっていた。

「ダメだよ……ダメだよダメだよそんなのッ! 雄介先生はもう、ウルトラマンなんてやらなくていいのッ! これからもずっと、私だけの雄介先生でいてよッ! あんなところになんか、もう行かないでよッ! なんでBURKが居るのに、雄介先生まで戦わなくちゃいけないのッ!」

 不登校となり、外との繋がりを持てずにいた有彩にとって、雄介は家族を除けば唯一とも言っていい拠り所。
 その雄介を危険な戦地に行かせないために刺す、という矛盾の極致は、彼女の心をさらに混沌の奥へと沈めている。耐え難い罪悪感に狂いながら包丁を振り回し、怯えたような表情で雄介を凝視する有彩の言動は、ますます常軌を逸していた。

(……俺のせいだ。俺が有彩の気持ちを知らないままだったせいで、彼女を追い詰めてしまった……! マイナスエネルギーの発生源が彼女だと気付いてさえいれば、こんなことにな
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