過去編 ウルトラクライムファイト
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テンペラー軍団の襲来から、約4年前。怪獣や宇宙人から絶えず狙われ続けていた地球の命運は、当時のBURKとウルトラマンザインに託されていた。
そのザインに変身し、地球を守り続けていた青年――当時18歳の椎名雄介は。人間の負の感情から発生し、怪獣を生み出すことすらある「マイナスエネルギー」の脅威を、その身で味わっていた。
「そん、なッ……! どうして、こんなッ……!」
――双頭怪獣「パンドン」がその二つの嘴から猛火炎を放ち、東京の街を火の海に変えて行く。マイナスエネルギーを帯びたその個体は、従来種よりもさらに強大な火力を振るっているようだった。
その光景を、遠方の高層マンションの外廊下から目撃していた雄介は――鮮血の染みが広がっている腹部を抑えながら、手摺に寄り掛かっていた。
「ひ、ひどい怪我だよね、雄介先生。そんなにひどい怪我なら、もう戦えるわけない、よね? 私だけの雄介先生で、居てくれるよね……!?」
そんな彼の眼に映っていたのは、街を焼いているパンドンではなく。
ザインに変身しようとしていた自分を包丁で刺した、教え子の少女だったのである。
震える手で包丁を握っている彼女は、自分の「行為」をまともに受け止められずにいるのか。光を失った眼に愛する男の姿を映し、ぼろぼろと涙ぐみながらも力無く笑っている。
――毒ヶ丘有彩、15歳。都内在住の中学3年生だったが、現在は不登校。そして、家庭教師のアルバイトをしていた雄介の教え子だ。
146cmという小柄な体躯に反した、推定Iカップの爆乳を持つ絶世の美少女。そんな彼女の類稀な容姿は、羨望、嫉妬、欲情、好奇、虐めだけでなく。ストーカーや誘拐未遂など、不登校に至るほどの「災厄」を呼び込んでいたのである。
その災厄を糧に生み出された莫大なるマイナスエネルギーが、今まさに東京を燃やしているパンドンの発生源となっていたのだ。
包丁を握る彼女の全身には、パンドンにあるものと同じ、どす黒いオーラが纏わり付いている。ウルトラマンの力を持つ雄介にしか視認出来ないそのオーラは、ますます強まろうとしていた。
(有彩のマイナスエネルギーがあの怪獣を……!? ここまで濃くならないと、ウルトラマンの俺ですら気付けないなんてッ……!)
腹部の傷を抑えながらも、有彩とパンドンを交互に見遣り状況を把握しようとする雄介。その眼は傷の痛みに構うことなく、怪獣を倒さんとする鋼鉄の意志を宿していた。
そんな彼の様子を目にした有彩は、信じられないと言わんばかりに眉を吊り上げている。
「えっ……雄介先生、まさか、まだ戦うつもりなの……!? そんなの、そんなこと出来るわけないじゃん! だっ
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