暁 〜小説投稿サイト〜
炎髪灼眼の討ち手と錬鉄の魔術師
外れた世界へ
一章 「訪れた最期」
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ら脱出する方法だけだ。
丹念に床を調べたが、何らかの構造物の上階ではないらしい。
何でもないようだが、これが結構、重要な事だ。
床を抜けたら階下がありました、なんて笑えない冗談だからな。
ちなみに、この牢屋には窓がない。
約一週間と俺は見ているが、実を言うとこれは正確性を欠いている。
だからと言って、どうって事もないんだが。

という事で、ここ数日の俺は穴掘りに勤しむ日々を送っている。
道具は無いが素手で惚れるわけもないので、靴を脱いで地面に打ち付けて石床を捲ろうという魂胆だ。

今後は靴に何かを仕込んで置くことにしよう。
よくあるのが爪先にナイフだな。
滅多に使う事はないだろうけど、考えてみると接近戦のバリエーションが増えるし、無駄な装備って事はないな。
実際、この場にあったならば脱出の手だては増えていた。
「けど、何と言うか……」
地味な作業だな全く。
まぁ、脱獄に地味も糞もないか。

だが、少しは変化が欲しいのも事実。
黙々と一週間も地面を叩く事が出来るのは、元来、趣味らしい趣味を持ち合わせていない事がなせる技なのか……。
とは言いつつ、飽きてきている事も事実。
「どうしたもんかな……」

手を動かしながら思案に耽っていると、この場に居る筈の無い人物が現れた。
投獄より推定七日目にして初の出来事である。

「士郎……、こんな所に居たのね」
能面の様に無表情な顔で女性は言った。
「遠……坂? 嘘だろ? どうしてこんな所に居るんだ!?」
思わず手を止める。
有り得ない、こんな所に彼女が現れる筈がない。
時間の感覚はまだ狂い出していないだろうが、どうやら精神が先に参ってしまったらしい。

「残念だけど、貴方の目や精神は正常よ。それは私と貴方自信が一番良く分かる事ですもの」
当たり前だ。
そんな事は分かっている。

ただ、分かろうとしなかった。

いや、分かりたくなかった。

「助けに来てくれた……って訳じゃなさそうだな。となると、ここに来た理由はもしかして……」
「多分、貴方の予想通りの内容よ」
出来れば外れて欲しい事だが、一応聞いてみることにした。
もしかすると……、そういう事があっても良いと思ったからだ。
「俺の処刑を協会に命令されて来た、って所か?」
「正確には『当該魔術師の保有する固有結界の完全保管』って事になっているけど、意味するところは全く変わらないわね」
俺の淡い期待は完膚なきまでに打ち砕かれる。
久しい彼女の口からただ一言、助けに来た、と言って欲しかった。
例え、そんな事が出来る筈も無いと知った上でもだ。

「まぁ、この道を進むって決めた時から覚悟はしていたんだ。ここで醜態を見せるなんて、アイツ等に失礼だよな」
こうなる未来が『有るかもし
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