失恋する姉
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服は、詰めた。必要最低限だ。そもそも持っていくものなんてそんなにない。
うちは、兄弟だけで10人はいる大家族も大家族だ。おかげさまで貧乏金なし、お下がりはすりきれるまで着るが鉄則で、紅一点のあたしも全部持っている服は男物だ。
ぎゃんぎゃん騒ぐ弟たちを押しのけ、それを解いて、生地は贅沢言わないとしても少しでも女らしく見せようと、都のドレスを想像しながら繕ったスカート、花の汁で紅をさし、椿の油を絞り髪を整え…ぜんぶぜんぶぜんぶぜんぶずぇーーーんぶ、レアンオン兄さまのため、だったのに!
「…う…」
ずり、とあたしは鼻水をすすりあげた。俯くと腰まではある髪が、重く顔を覆う。
…切ってしまおうか、こんなもの。
いくら農作業をするのに邪魔でも、針仕事をするのにうっとおしくても、「綺麗だよ」と言ってくれたその一言であたしの誇りになった。
でも、そう言ってくれた人は、もうあたしだけの兄さまじゃ、ない。
だったら、こんなもの、何の意味もない。
ハサミ…ああいいや獲った獲物を捌く用に短刀を持っていこうと思ってたんだった。錆びてるけど、しょっちゅう研いでいるから見た目ほど切れ味は悪くない。
後ろで髪を掴んで、目の前に持ってくればまた涙が出た。
ひどい、よ、兄さま…あたしをお嫁さんにしてくれるって、言ったのに…。
「サラっ!?」
「えっ!?」
あたしは、いきなり片手を押さえられて誰かに抱きしめられていた。勢いで短刀が手から零れてしまう。
匂いですぐにわかった。というより、あたしが泣いているといつもきてくれるのは、この子だった。ふたつ下の弟、ジャン。
「ジャぁぁン〜」
ジャンとわかった途端、あたしはもっと涙が出てきた。
「サラ、おまえ…!なに、しようとしてたんだ…!」
ジャンはなぜか物凄く怒っているみたいだった。
か、髪切るのってそんなにいけないこと?あんまり短い髪って見ないけど…。でもジャン達も短いし…。
「俺が来なかったら、どうする気だったんだ…!見損なったぞ!」
ジャンはあたしの頬を両手で挟んで顔を覗き込んだ。
あたしははっとした。ジャンの緑の瞳、その目尻に、涙が溜まっている…。
「ご、ごめんなさいジャン」
あたしは謝った。そんなに髪を切るのがいけないことだとは思わなかった。というより髪切っちゃいけないなんて聞いたことないから、ジャンがこんなにあたしの髪を大事にしてくれているなんて、知らなかった。
歳が近くて、兄弟の中で
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