第十七章〜終幕、そして〜
第九十話
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光の鎖を引き千切った魔王に立ち向かう私達に、不思議と恐れの心は無かった。
寧ろ今の状況に歓喜している自分がいる。
喜んで戦うなんて馬鹿みたい、今まで心の底でそんな風にも思っていたのは嘘ではなくて、
おちゃらけて軽口を叩いていても、いくら戦いで高揚しても、人を斬れば斬った分だけ、誰かが死ねば死んだだけ心が重くなった。
それがモブだろうがプレイヤブルキャラクターだろうが、私にとってはここは現実なのだから。
でも、今はそんな剣を鈍らせる重さは何処にも無くて、ただただ心が軽い。
皆がここにいて、同じ思いで戦ってる。それがたまらなく嬉しい。
「千引に縫われし伊邪那美のぉッ!」
「和み連なれ、人間色の石!」
豪快な立花さんと鬼島津の剣が魔王の足を砕く。
復元を図ろうとする魔王を阻止するべく、二人の背を足場に高く慶次とアニキが飛び上がった。
「鬼神の怒りに触れてみなッ!」
「人の恋路を邪魔する野暮は!」
二人の揃った攻撃が魔王の腹を突き抜ける。そして地面に着地した後に慶次がにやりと笑って、
「元親にぶっとばされちまえ、ってね」
と言った。アニキが顔を赤くして慶次の頭を叩いているけど、叩かれた本人は全く懲りてる様子は無い。
ったく、アニキも初心なんだから。からかわれてるうちが花よ?
「刹那の未来、聞こし召しませ!」
「銃火に咲け!紅蓮菩提の散弾華!」
綺麗処二人が魔王の腕を吹き飛ばし、落ちてきた腕から現れるバグのモブ達を、東軍と西軍のモブ達が切り伏せていく。
こんなのは異様な光景だというのに、どうしてこんなにも心が落ち着くんだろう。
「小十郎、不謹慎なこと言っても良い?」
「はい」
「私、今すっごく楽しい。……初めて、戦いでこんなに気持ちが昂ったかもしれない」
そんな私に小十郎が本当に穏やかな表情で笑っている。
「小十郎も、今までで一番昂っておりますれば。それに皆も」
誰の顔も皆晴れている。攻撃を食らって吹っ飛ぶ連中もいるけど、それでも恐怖に引き攣った顔をしている奴は何処にもいない。
魂の無い人形だと松永は言った。けれど、こんな風に戦う連中を、私はただのデータだとは思いたくは無い。
皆、普通に生きてる人間だと、現実世界と変わらない人間だと思いたい。
黒いモブにやられて東軍西軍の数は確実に減っているはずなのに、
徐々にこの場で戦う人間が増えてきているような気がする。増殖してるってことはないはずだけど……。
「さんじゅうさんてんおうごんほうとう!」
「怒涛の如く、血風捲いて疾る虎ッ!」
高く頭上に飛び上がって攻撃を仕掛けたのは軍神で、隕石を降らせて辺りの黒モ
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