第八十部第五章 秘密兵器その二十四
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「ですから」
「その場合はですね」
「戦場に戻っていたのでは」
「そうですね、それが出来たならば」
「出来たなら、ですか」
「これは私の憶測ですが」
こう前置きしてやや怪訝な顔になってだ、八条は述べた。
「シャイターン主席に何かあったのでは」
「シャイターン主席自身に」
「はい、おそらくサマルカンド星系に戻っています」
災害でだ、八条はシャイターンの不在をこう読んでいた。そしてそれはまさにその通りのことであった。
「災害が起こったので」
「ならその災害にですか」
「地震では余震がありますね」
「はい、二度揺れることもです」
実際にとだ、バールは八条に答えた。
「あります」
「そうです、そして」
「災害に巻き込まれたか」
「若しくは」
八条はこうも言った。
「過労か何かで」
「過労、そういえば」
八条の今の言葉にだ、マックリーフが応えた。
「どう見ましても。アッディーン大統領もですが」
「シャイターン主席はですね」
「オムダーマンとの会戦以来です」
「多忙でした」
激務、その中にあったというのだ。
「何しろ戦争の指揮を一手に行っていました」
「会戦の采配もでしたね」
「その前後のことも」
つまり戦争のこと全てをというのだ。
「ほぼでした」
「それだけにですね」
「連日連夜ほぼ不眠不休だったでしょう」
「そこに災害救助ですね」
「それではです」
そうした激務の中にいればというのだ。
「やはりです」
「人間であるなら」
「疲れます、機械でもです」
「動き尽めなら」
「すぐに壊れます」
「そうしたものですね」
「はい」
その通りだとだ、八条はマックリーフに話した。
「始終動いてばかりでは」
「やがて壊れる」
「人もそれは同じで」
それでというのだ。
「シャイターン主席も人なので」
「疲労が蓄積し」
「そうなってです」
「この度は、ですか」
「過労か何かで」
「倒れられて」
「戦場に出られなかったのでは」
こう予測するがその通りであった、しかし八条に今それを確かめる術は存在していない。予測に過ぎなかった。
「私はそう思います」
「左様ですか」
「あれだけの激務では」
どうしてもというのだ。
「幾ら頑健な人でも」
「それでもですね」
「倒れてしまいます、そして」
「その時がですね」
「今だったのでしょう」
こう言うのだった。
「そしてそれがです」
「ティムールにとってですね」
「致命傷となったのです」
「ティムールは独裁国家です」
バールがこの現実を指摘した。
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