第八十八話
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幸村君にぶん殴られて完全に伸びている佐助を回収して、私達は奥をひたすらに目指していく。
風景が混ざり合って現在地が分かり難かったけれど、周辺に掲げられた旗が皆西軍のものであるのに気付くと、
大体の位置が分かるようになった。
もう終着点は近い。明智を倒したから、奥に待つのは大谷だけだ。
……ひょっとしたらお市もいるかもしれないけれど、無事でいてくれれば良いんだけどなぁ……。
「ヒッヒッヒ」
西軍の本陣らしき場所に辿り着いた辺りで、気味の悪い笑い声が辺りに響いた。
この笑い方は聞いた覚えがしっかりある。
「大谷殿! 何処におられる!! 姿を見せよ!!」
幸村君の馬鹿でかい声に、ふわりと何者かが姿を現した。
「……誰?」
現れたのは輿に乗った、目つきの鋭いなかなかの美男子だ。
蝶々みたいな変な頭巾を被って輿に乗ってなきゃ、一体コイツが誰なのか分からなかったわ。
「大谷、何でそんな詐欺っぽい姿してんのよ。全身に包帯巻いて輿に乗ってんのがアンタじゃないの?」
そんなことを言ってやれば、カッコイイ大谷がにやりと笑う。
「あのような姿が本来の我ではない……この姿こそが、病に罹る前の我の姿よ。ヒッヒッヒ」
「……折角カッコイイのに、あの笑い方で台無しだわ」
それに姿は戻っても精神状態までは戻らなかったのか、それともバグに侵食されて完全におかしくなってしまったのか、歪んだ表情は変わらない。
私はそっと懐中時計を見る。既にあれから二時間が経過している。
まぁ、あと四時間残ってるから平気だと言いたいところではあるんだけど……
ボス戦、ってのは苦戦するからボス戦なのであって……チェーンソーで一撃でバラバラになったらいかんのですよ。
まぁ、アレはアレでアリだとは思うけどもさ。
つまり、時間があるから大丈夫、という安心は出来ないということだ。
「てか、何であんな胸糞の悪いもん見せたのよ。人のトラウマ引き摺り出して楽しい?」
「我は幸ある者が嫌いでなァ……どうだ、不幸になったか? 主らの関係に亀裂は入ったか?」
ニヤニヤと笑うコイツが結構ムカつく。皆も武器を構えて飛び掛らんとしてるしさ。
「……主らに掛かっている厄介な術、それを解くための時間稼ぎよ。
この闇に侵食されずにいるのは、その術のせいであるからな。
……それには時間が決められているのであろう?
既に一刻は消費している……完全に解ければ、皆この闇に等しく取り込まれる。
そして、何より魔王復活を阻止されては困るでなぁ。術の完成の為にも時間はあればある方が良い。
……これで、我の望む不幸が更に現実のものとなる! ヒッヒッヒ!」
……このウイルス、性質が悪いな。プロテクト
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