第一章
[2]次話
絶望を超えた絶望
根室寿はこの時自宅で遠い目になっていた、そのうえで妹の千佳に言った。
「何が悪いんだ」
「そう言われてもね」
妹は兄に厳しい顔で応えた。
「私もね」
「どう言っていいかわからないか」
「ネタ?」
千佳はかなり真面目な顔で言った。
「ひょっとして」
「伝説になってるな」
寿も否定しなかった。
「もうな」
「毎年なってる気がするけれど」
「今年はもうか」
「あの、何ていうかね」
小学生ながら兄に言葉を選んで話した。
「あんまりにも酷いわね」
「今年の阪神はな」
「やっと勝率二割ね」
「二割三分になったよ」
「そうよね」
「二割でやっとだな」
「それが凄いわ」
こう兄に言った。
「私もこんなのはじめて見たわ」
「この展開はか」
「流石にね」
「九連敗の後六連敗か」
「その後四連敗ね」
「それで勝率六分までなったな」
「打率でも酷過ぎるわね」
また言うのだった。
「打率でも二割三分だと」
「下位打線でも酷いな」
「そうよ」
否定しなかった、もっと言えば出来なかった。
「何でこうなったのかね」
「今年は優勝だって思ってたのにな」
「いや、それ毎年言ってるから」
阪神ファンの兄に広島ファンとして答えた。
「そこは置いておいてね」
「それでか」
「今年は最初からだからね」
「ネタになってるな」
「ネタになり過ぎでしょ」
幾ら何でもというのだ。
「記録らしいじゃない」
「サヨナラ負けも多いしな」
「開幕七点差ひっくり返されてで」
「ビジターも連敗でな」
「あの、カープに負けるのはいいけれど」
また広島ファンとして言った。
「巨人にはね」
「わかりやすい言葉だな」
「カープファンだから」
「そうだよな」
「お兄ちゃんだってそうでしょ」
「巨人には勝ってくれ」
寿もこう言った。
「しかしな」
「巨人にはよね」
「前の三連敗みたいなことは止めてくれ」
「それ言わないの」
そのことを言われた瞬間だった。
千佳は全身を黒い瘴気で覆った、そして目を赤く禍々しく光らせてそのうえで兄に対して怒りの言葉を告げた。
「思い出したくもないから」
「反省材料にしてもか」
「そうよ、だからね」
「じゃあ言わないね」
「ええ、それでね」
兄に瘴気を消してからあらためて話した。
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