第二十三章 お姉ちゃんと、妹
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イスター》たちとの戦いによる衰弱が、まったく癒えていないためだ。
それでもここまでは、至垂が武器を持っていなかったため、軽く受け流すことが出来た。だから疲労が目立たなかった。
現在は状況がまったく異なる。
至垂も魔道器魔法使いであり、現在エンチャントされた武器を持っている。
気を抜けば一瞬で生命を失う。
しかし剣術においても至垂は手練であり、アサキは防戦を余儀なくされ、その運動と緊張はただでさえ疲弊した肉体からますます体力を奪っていく。
そんな友のためにも、自分の妹のためにも、早期決着を、そう思ったか空手の治奈は、一瞬の隙を狙って床を蹴り、やっと気合の叫び声を発しながら至垂の構える長剣の間合い内側へと飛び込んでいた。
だが、
「格闘で勝とうなど甘い!」
至垂徳柳は、剣を持っていない方の肘を、治奈の頬へと叩き込んだ。
瞬間、身体を回し、さらには蹴った。女性とはにわかに信じがたい、とてつもなく大きな足の裏で、治奈の胸を。
蹴られた治奈の身体が、ふわり空中に浮いたかと思うと、次の瞬間には壁に叩き付けられていた。
完全に、劣勢であった。
アサキと治奈は。リヒト所長が剣を手にした時から、途端に一転して、少し複雑な意味で劣勢になっていた。
問題は、アサキにある。
相手が武器を手にしたというのに、でも魔道着は着ていないため本気を出せないのだ。
魔道着は、強化繊維で作られているため、そのものの自体が頑丈だ。
加えて、刻まれている小さな呪文文字により魔力を帯びて、その頑丈さはさらに向上する。
加えて、魔法使いが着ることにより、魔力伝導効率が高まり、その頑丈さはさらに向上する。
つまり着ることによりどうなるかというと、急所への的確な一撃がない限り、そう簡単には死ななくなるのだ。
ところが、至垂はその魔道着を着ていない。
先ほどまで着ていた硬めのスーツも、現在は脱ぎ捨てており、巻き付けた白いシーツの下は全裸である。
だから、攻撃を躊躇してしまうのだ。
自身、疲労にふらふらで、そのような余裕などないというのに。
治奈の空手も、アサキの気持ちが分かるだけに影響を受けているのだろう。いま一つ攻撃の迫力を出せない。
師範役であるカズミに引けをとらないだけの空手の腕前を、治奈は持っているはずなのに。
そのような理由により、苦戦していたのである。
生身の一人に対して、魔道着を着た二人であるというのに。
また、白いシーツを纏った至垂から、強くしなやかな動きで長剣が振り下ろされる。
アサキはなんとか受け止めながら、びりり手の痺れるのを堪えて、垂直に跳んで、至垂の顔面へと蹴りを浴びせた。
いや、不意を付いたつもりでいたのに、剣を持
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