第八十五話
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ている。
「『違う、アレは俺がやったことだ。俺が人を殺した……人を』」
「黒い雲とか出てたら、小十郎も気をつけないと駄目だよ? いくら雷の力持ってるって言ってもさ」
心配そうな私を、舞台の小十郎が怯えた目をして見ている。
「『姉上には、本当のことを話すか? 俺が、殺したって……心配なんかしなくても、そんなことはないって……』」
「『それを知られたら側にいてくれるのか? 姉上まで、俺を化け物だと言うようになるんじゃないのか?
姉上がいるから、俺はどうにか耐えて来られたのに』」
「『言えない……知られちゃならない……』」
膝を抱えて震えていた小十郎が顔を上げる。その顔は微笑んでいて、怯えの色も何もない。
「姉上こそ気をつけて下さいよ? 姉上は雷の力ではないのですから……あんな風に、焼け焦げてしまわないように」
「『……もう、触れられない。汚れちまったこの手で姉上に触るわけにはいかない……縋って泣くなんて、許されない……』」
舞台上で泣きそうに顔を歪めたところで、スポットライトが消えた。
またスポットライトが照った時には、小十郎は少し成長をしていて木刀を手にしてゴロツキ共を叩き伏せていた。
傷一つなく無駄に鋭い眼光に、連中は怯えて逃げていく。
ああ、荒れてた頃の話か。懐かしいな。あの頃は本当、近寄りがたい雰囲気放ってたもんな。
舞台の小十郎が突然木刀を手から滑り落とし、蹲るようにして自分の身体を抱えている。
身を震わせて、何かに耐えるような仕草に私は訝しがった。
「嫌だ……こんなこと、したくねぇ……のに……」
「『自分の中に湧き上がる何かが、抑えられねぇ……人を無意味に傷つけなけりゃ止まらねぇ……』」
「『俺の中で誰かの血が見たい、そう叫ぶ。……俺は本当に鬼になっちまったのか?』」
「『怖い……このまま本当に、躊躇いもなく人を殺すようになっちまったら……』」
小十郎が身を起こして自分の顔を両手で覆う。
「姉上……助けて下さい……、怖い……助け……」
弱々しく吐かれた言葉は今にも泣きそうで、またスポットライトがフェードアウトして消えていく。
再びスポットが当てられた時には戦の真っ最中だった。
また少し成長した小十郎は、政宗様よりも少し若いくらいだろうか。刀を振るって片っ端から人を斬っている。
その口元は微かに綻んでおり、笑って人を斬っていた。
「小十郎! もういい! それ以上斬らなくていいから!!」
小十郎と同じ年頃の私が必死に舞台の上で叫ぶ。
しかし、小十郎の耳には私の声が届いておらず、ただひたすらに楽しんで人を斬っている。
「小十郎!!」
腕を引いたとこ
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