第八十四話
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!!」
「……いつまでこんな茶番劇見てなきゃならないんだ」
苛立ったように言ったのは佐助だった。舞台の幸村君は、にやりと笑って佐助を見ている。
「茶番劇? 何を申すか、そなたは常日頃からずっとこのような茶番を目にしておったではないか。
俺の事情を知りながら、母に愛情を求めようとする姿は愚かだと思わなかったか?
御屋形様に依存しきった姿は情けないと思わなかったか?
そして、後継となってまともに采配を振るえずに家臣達が去っていく状況は、己も身を引こうとは考えなかったのか?
俺には分かっているぞ、お前が俺の側から離れたがっていたことを」
佐助が一呼吸の間もなく舞台上の幸村君に攻撃を仕掛けた。
にやりと笑ったその幸村君は、槍を持って佐助の攻撃を凌いでいる。
「……ああ、言うとおりだ。愚かだと思ったし、情けないとも思った。離れた方が良いんじゃないかとも思ってたさ!
けど、俺はもう自分の意思で二匹の虎に仕えると決めてんだ!! 旦那はどんなに落ち込んだって必ず自分の力で立ち上がる!
失敗を繰り返したって前向きに進んでいく力がある!
それに何をするにも真剣で一生懸命で……俺はそんな旦那を支えるために、副将をやることを決めたんだ!!
アンタみたいな偽者に、旦那も俺も揺るがすことが出来るか!!」
佐助の放った一撃が、舞台の幸村君の首を裂く。勢いよく噴き出したのは血ではなくて数字の羅列だった。
舞台の幸村君は今度は穏やかに笑って佐助を見る。
「ならば安月給でも全身全霊を持って支えてみよ。……頼りにしておるぞ、佐助」
ガラスが砕けるようにしてあの幸村君が消え、舞台も何もかもが消えてまた関ヶ原の一本道に戻っていた。
幸村君は膝を突いたままこの光景を涙も拭わずに見ている。佐助は一つ溜息を吐くと、幸村君の前に立って手を差し伸べた。
「いつまで座ってんの。その白い袴、汚れると洗濯大変なんだからさぁ……早く立ち上がってよ」
何だかそんな場違いな会話の仕方が、二人の付き合いの深さを示しているようで微笑ましくも思う。
幸村君は涙を拭って槍を持って立ち上がる。決して佐助の手を取ることは無かった。
「一人で立てる。……俺は平気だ」
力強く笑った幸村君に、佐助も何処か安心したように笑って手を下ろしていた。
「良い主従関係だねぇ……」
ついそんなことを口走ると、政宗様に睨まれてしまった。
だって、政宗様と小十郎は何だかんだで暑苦しいし、べったりくっ付いてるからむさ苦しいし、
あのくらいcoolな距離感の方がいいよ。佐助オカンだけどもさ。
とりあえず私達は先へと急ぐ事にした。
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