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竜のもうひとつの瞳
第八十四話
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そうな顔をする。

 「同じ腹から生まれた子であるというのに、どうしてこうも違うものかの……
弁丸や、お前の兄は身体が弱く、当主として立つには辛いやもしれぬ。お前はそんな兄を支えておあげ」

 優しく幸村君を抱きしめたお母さんを見て、幸村君が持っていた槍を落としていた。
これを私達は一斉に見たけれど、かけられる言葉なんて何もない。

 ……ショックだろうよ、だって自分の親は妾で生まれてすぐに出て行ったって聞いたわけなんだからさ。
まさか義理のお母さんが実母だったなんて。

 不意に、お母さんが悲鳴を上げた。何事かと思えば、赤ん坊の幸村君の身体から炎が上がっている。
その炎はお母さんの身体を包み、真っ赤な炎を上げ始めた。

 「ぎゃああああ!! 熱いっ……誰か、誰か消しておくれ!!」

 「山手様!!」

 婆娑羅の力の覚醒、生まれてすぐとは聞いてたけど幸村君はこの時だったんだ。

 結局、お母さんは全身に酷い火傷を負って顔にも酷い痕を残すことになってしまった。

 「化け物よ……あの子は私の腹を借りて出てきた化け物の子よ!!」

 場面が変わって、酷い火傷の痕を残すお母さんは、男の人に縋るようにしてそんなことを言っている。
ぐずって泣く幸村君をあやす人間はいなくて、皆怯えたように幸村君を見ていた。

 「某は、生まれてすぐに己の母の身体を焼き、化け物として扱われた……
見かねた父が、某には妾の子であると告げ、周囲にもそのようにして口裏を合わせるように言ったのでござる。
母は某を憎むようになり、身体を焼かれた仕返しとばかりに刺客を放つようになった。
愚かな某は、そんなことも知らずに母に愛情を求めようと、十八年も付きまとったのでござる!」

 スポットライトが舞台の幸村君に当たり、そして同時に膝を突いて項垂れている幸村君にも当たった。

 「俺は……俺は、何ということを……」

 泣く幸村君に誰も何も言えなかった。はっきりと言えば、これだって不慮の事故だと思う。
力の暴走、幸村君が焼こうと思ってお母さんを焼いたわけじゃない。偶然が重なって起こった事故だったんだと思う。

 「真田……」

 小十郎が渋い顔をしてそんな幸村君を見ている。佐助も事情を知っていたのか、同様に渋い顔をしている。

 「六つの時に父が戦場で死に、兄が真田の当主となり、某は真田の内情を知る御屋形様に引き取られた。
某は御屋形様の小姓となり側近となり……」

 くるくると回る舞台の幸村君の隣に信玄公が立っている。

 「御屋形様! この幸村、御屋形様無くして生きてはおれませぬ!! 全ては御屋形様のため!!
その為だけに某は生きておるのです!! 御屋形様、どうか某を置いて逝かないで下されぇええええ!
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