第三章
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「何、あれ」
「そういえば急に出て来ましたね」
「何、あれ」
「見たところ人間じゃないですね」
「不審者じゃないわね」
「じゃあ何でしょうか」
「妖怪じゃ」
その置きものの様なものから言ってきた。
「わしは油すましじゃ」
「ああ、妖怪なの」
「そうなのね」
「何かって思えば」
「妖怪なのね」
「じゃあ別にいいわね」
「そうですね」
二人は妖怪と言われて頷き合った、二人が通っている八条学園は妖怪や幽霊の話が極めて多く慣れているのだ。
「妖怪は別に悪いことしないし」
「悪戯位ですしね」
「別に家に入っていてもね」
「構わないわね」
「それはその通りじゃが見ておった」
妖怪は二人に言ってきた。
「油を粗末にするのではとな」
「それ私に言ってるのよね」
亜弥は妖怪に問い返した。
「そうよね」
「左様、街でお主を見るとやけにオリーブオイルの匂いがした」
「いつも沢山使ってるしね」
「それでじゃ、粗末にしておるのかと思い」
それでというのだ。
「わしは油を粗末にしておる者を叱る妖怪であるからな」
「それでなのね」
「その時は叱ろうと思ったが」
それでもというのだ。
「そうでなくてよかったわ」
「それは何よりね」
「うむ、残ればパンに浸して食べるとはな」
「無駄なくよ、折角身体にいいんだし」
オリーブオイルはというのだ。
「出来るだけ残さずよ」
「それならよい、しかし植物性でも油じゃ」
だからカロリーは高いというのだ。
「そこは気をつける様にな」
「ええ、それはね」
「それだけ言っておく、ではな」
妖怪はここまで言うとだった。
すたすたと玄関まで歩いて家を後にした、亜弥は真里と共に彼を見送ってそのうえでこう言ったのだった。
「油を粗末にしたらよくないわね」
「そうですね」
「ええ、けれど摂ったら」
亜弥はその場合のことも話した。
「ちゃんと身体を動かさないとね」
「太りますね」
「だから明日もね」
「部活頑張りますね」
「そうするわ、オリーブオイルの分はね」
それこそというのだ。
「ちゃんとね」
「動きますね」
「そうするわ、じゃあ食器洗ってお風呂入って歯を磨いて」
「そうしてですね」
「寝ましょう、ただワインはまだ残ってるから」
赤らんだその顔で語った。
「それはね」
「飲みますね」
「そうしましょう」
笑顔でこう言ってだった。
亜弥は真里とリビングに戻った、そうしてワインの残りを飲んでからそのうえで言ったことをして同じベッドに入って眠った。
大阪の油すまし 完
2022・4・28
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