第八十部第五章 秘密兵器その十五
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何処からか魚雷の強烈な一撃を受けた、それも各所に。そしてそのダメージは。
「損害率六十パーセント」
「六十パーセントに達しました」
「あと一撃を受ければ」
「最早」
こうした話が出ていた。
「この要塞は駄目になるぞ」
「機能停止まであと少しだ」
「そうなった」
「何とかしなければ」
「だが敵が何処だ」
肝心の彼等はというのだ。
「放ってくる魚雷の軌跡はわかるが」
「その先には誰もいない」
「何もいないぞ」
「レーダーにも反応はない」
どの艦にも一切なかった。
「無論見えはしない」
「そうだというのに」
「何故攻撃が来る」
「思わぬところから」
「何をしても見付からないというのに」
「これはどういうことだ」
彼等は明らかに戸惑っていた、そしてだった。
その戸惑っている最中にも移動要塞にも防御システムにも魚雷の強力な一撃が次々に浴びせられてだ、移動要塞は。
動きを止めた、それで移動要塞の司令官であるベルジット=ハルーク大将も苦々しい顔で一つの決断を下した。
「この要塞は最早駄目だ」
「では、ですか」
「もうこの要塞を放棄されますか」
「そうされますか」
「碌に動かなくなった」
機能のかなりの部分を停止しているというのだ、そしてそれは事実だった。
「だからだ」
「ここは、ですか」
「移動要塞を放棄され」
「総員もですね」
「退く」
この要塞からというのだ。
「いいな」
「わかりました」
「ではです」
「シャイターン閣下にもですね」
「その様にですね」
「申し上げる」
ハルークはシャイターンが今戦場にいないことを知らない、それで部下達にもこう言ったのだ。そしてだった。
彼はシャハラザードに通信を入れた、だがそれを聞いたのはシャイターンである筈もなくであった。
その話を聞いた幕僚の一人がフラームとアブーに問うた。
「どうされますか」
「もう移動要塞もか」
「機能の殆どを停止したか」
「それでか」
「放棄するというのか」
「はい」
まさにとだ、幕僚は二人に答えた。
「それがハルーク大将のご決断です」
「確かにな」
アブーがその幕僚の言葉に応えた。
「今の移動要塞はな」
「ダメージを受け過ぎた」
フラームも述べた。
「だから機能の殆どを停止しているしな」
「それではですね」
「もうこれ以上の戦闘は無理だ」
フラームはあらためて述べた。
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