第八十二話
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ておかないとね……そろそろ勝負をつけよう」
身体が動くままに村正を構える。刀を振るう前に、不意に思いがけない言葉が口をついて出た。
「凍瀧の如し、凝れ雷公!」
流れるような剣は、小十郎の剣。青い残光を残して、私は小十郎の剣を鏡映しに再現して行く。
石田はそれを受け流すことが出来ず、まともに食らっている。最後の一撃を叩き込んだ瞬間、村正の刀身が音を立てて砕け散った。
「村正が……」
やっぱりこの時の為に私に託していたのか。
何だか都合のいい解釈も、こんなにタイミングよく砕けてくれると真実味を増しちゃうわ。
私を包んでいた青い雷が消える。戦いの終わりを感じて、小十郎や政宗様、そして幸村君が駆け寄ってきた。
石田はその場に大の字に倒れて空を見ている。刃を返しての攻撃だから、石田には傷一つつけてないはずだ。
「……本当は全て分かっていた……家康を憎むことが筋違いであるということも。
秀吉様は己の信念を懸けて家康とぶつかり、そして散ったのだということも。
何より……あの日から、私には何一つ許可を得ていなかったことも……!」
顔を歪めて泣くその様は、凶王などと言われるほどに狂った男の姿には見えなかった。
憎しみを持ってしか生きられなかった哀れな男。それが石田三成なのだろう。
「どうしたらいい……私は、これから……」
「……世界にでも、行って来たら?」
私の呟きに、石田が身体を起こして私を見る。
「豊臣秀吉は、生前世界進出を目論んでいたわけでしょ?
秀吉が、何を目指していたのか……それをその目で見て来ても良いんじゃない?
今までは秀吉が生きる意味だったんだろうけどもさ、これからは自分の足で立って自分で考えて、自分の意思で生きても良いんじゃない?
そうやって考えて、それでも秀吉の遺志を継ぎたいってんなら、継げばいいし、それ以外の生き方が見つかればそれでもいいじゃない。
少なくとも、今は死ぬ時じゃないって言ってるんだと思うわよ」
竹中さんから貰った砕けた刀を見せてやれば、それを受け取って石田がしっかりと握り締めて泣いていた。
「生きんしゃい、三成どん。おまはんはまだ若か。いろんな未来がある」
「そうですよ! 世の中には楽しいことも、明るいこともいっぱいあります! 悲しみだけじゃありません!」
「行き場がないのであれば、甲斐の地に来られよ。歓迎しましょうぞ!」
石田を囲むのは西軍に組した武将達だ。
何だかんだで絆ってのが出来てるんじゃん。西軍にもさ。
……ま、この不器用な人柄が放っておけないって思わせるのかもしれないけど。
「甲斐も良いけど、私としてはアニキに任せたいなぁ〜?」
「あぁ? 何か言ったか?」
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