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竜のもうひとつの瞳
第八十話
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いいのか? 竜の右目の名で知られるんじゃなくて、伝説の農夫みたいな感じで知られてて。
アンタ、本業がお百姓さんじゃないんだから。もしかして、泰平の世が来たら引退して農夫になろうとしてる?

 「確かに、片倉殿が作ったお野菜は美味しゅうございました。落ち着いたら、また戴きとうございますれば」

 まつさんまでそんなこと言うもんだから、小十郎も満更でもないって顔しちゃってさぁ……。

 「……政宗様、今度八百屋でも作って任せてみたらどうですか。畑拡張して。
この調子だと財政潤いますよ、ほぼ間違いなく」

 「Oh……それも悪くねぇかもな」

 政宗様も何処か呆れ気味だけど、小十郎が満更でもないんならと諦めてくれた。

 「ところで、何でアレの説得を小十郎に任せた」

 「ああ、それは……」

 尊敬の眼差しを超えてるような、熱っぽい視線を小早川が小十郎に送っているのを政宗様が感じとって、慌てて小十郎の腕を引いて連れ戻してくる。

 小早川秀秋は、二代目片倉小十郎を追い掛け回していた、という説がある。
二代目は美男子で、小早川は男色家だったらしいですね。史実じゃ。
まぁ、息子ではないけどアレも“片倉小十郎”だから、ひょっとしたら手玉に取れるんじゃないのかな〜と思ったわけで……。

 ……明智の件で相当なトラウマを作った小十郎には絶対に明かせないけど。

 「……おい景継、テメェは本当に鬼だな」

 政宗様の言葉を聞かなかったことにして、小十郎に擦り寄ってこようとしている小早川を軽く睨んで大人しくさせておきました。
野菜はあげても、小十郎の貞操奪うのはお姉ちゃんが許さないぞ♪

 ちなみに小十郎は気付いてないんだか、この様子を不思議そうな顔をして見てたけどね。
小十郎が鈍感で良かったよ、本当に。



 さて、本陣が大分近くなった辺りで利家さんが西軍の連中をなぎ倒している。
かなり怒っているといった様子に、敵はおろか味方までも怯んでいる。

 ま、そんな空気も今に一発で消えると思うけど。

 「犬千代様ぁ〜!」

 「まつ!?」

 利家さんがまつさんを見つけて、一目散に走ってくる。
そして二人が熱い抱擁を交わしているのを幸村君が見て、また破廉恥でござると叫びそうになったんだけど、
それはきっちり顔に青痣を作った佐助が止めてくれました。

 君、私にキスしてすっごいこと言ったよね? アレは破廉恥じゃないのか。君の破廉恥の基準がどうにも分からん。

 「まつ、無事だったか!」

 「ええ……甲斐の猿飛殿に助けていただきました」

 「……甲斐? 甲斐とは、西軍では」

 完全に東軍西軍合わせた大連合軍と化しているこちらを見て、利家さんが眉を顰めている。

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