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竜のもうひとつの瞳
第七十八話
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ない」

 「そんな……」

 どう丸め込まれたのかは知らないけど、この戦いで勝利すれば平和な世になるとでも言われたのかもしれない。
鶴姫ちゃんが愕然としているところを見ると、耳障りの良い言葉を言われて引き入れられたんだろう。

 駆け寄ってきた海賊達にアニキを託し、孫市さんは四国攻めの真相を海賊に明かしている。

 「四国攻めだが、アレを仕掛けたのは黒田官兵衛、毛利元就だ。
その二人を動かしたのは大谷刑部……徳川家康は、四国攻めを行ってはいない」

 この事実を知って青ざめていたのは海賊達だ。
この様子だと家康さんが四国攻めを行ったと本気で考えていたようだ。

 「そ、それじゃ、家康さんは裏切ってなんかいなかったってことっすか!?」

 「ああ。……西軍は、この馬鹿の短絡的なところを突いてきたんだろう。徳川の旗を落としておけば、徳川が攻めたと思うと踏んでな」

 アニキと家康さんはお友達。なのにどうしてこの戦で西軍に付いたのか疑問ではあった。
だけど、徳川が四国攻めを行ったという偽の情報を流されている以上、アニキが家康さんが心変わりをしたと怒って西軍に組するのは無理の無い話かもしれない。

 でも、家康さんがアニキに何も言わずに西軍に組することを許したってのも、何か奇妙な話だとも思う。
友達なら真っ先に声をかけるだろうし、四国でそんなことがあったってのを知らないってのも妙だ。
もしかして、とは思ったけれどもあえてそれは口にせず、代わりに私も耳障りの良い言葉を口にする。

 「アニキにきちんと事情を説明してやんなよ。……もしかしたら家康さん、アニキに止めて欲しかったのかもしれない」

 「え?」

 「おかしいと思わない? 友達だって言うのならさ、どうしてアニキに東軍参加を呼びかけなかったんだろう。
西軍に組することを快く見逃すっておかしいでしょ? それに、四国攻めの話も本当に知らなかったのかしら」

 かすがが話した時は不愉快そうな顔をしていたけれど、実はそれを知っていたんじゃないのかとも思う。
知った上で、アニキの西軍に参加するのを見逃したんじゃないのかって。

 「じゃ、じゃあどうして……」

 「この戦い、家康が天下人になる為の戦いでもあるわけじゃない? 西軍を倒せばその力を天下に知らしめることが出来る。
……でもさ、絆の力で日本を統べる、なんて言ってる奴が戦いで終わらせようとしてるなんておかしいじゃない。
西軍に入ることを止めなかったのは、きっとアニキに止めて欲しかったのよ。
どっかで間違ってるって意識があったから……友達のアニキに助けを求めていたのよ」

 「い、家康さん……」

 海賊達は皆泣いているけれど、一部の武将達は眉を顰めたまま何も言うことはなかっ
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