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竜のもうひとつの瞳
第七十八話
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がいたわけか。アニキはそれを知って、自分の恋心に蓋して応援することにしたのか。
健気だねぇ……アニキってば。振られた後なのかもしれないけど。

 「それ、によ……喧嘩出来る相手が、いなくなっちまうってのはよぉ……寂しくってなぁ……
こんな、毒……鶴の字が食らったら、すぐ、死んじまう……俺なら、このくらい……」

 「馬鹿なこと言わないで下さい!! 私だって喧嘩出来る相手がいなくなったら寂しいですよ!!」

 涙を溜めた鶴姫ちゃんの言葉に、アニキが本当に嬉しそうに笑っている。
こんな様子を見れば、アニキが鶴姫ちゃんに惚れてるんだってのは嫌でも分かる。
周りの連中だって気付いているけれど、今生の別れになるかもしれない今、冷やかすようなことを言う奴は誰もいない。

 「へっ……へへへ……、そりゃ、嬉しいことを……言ってくれるじゃねぇか……」

 次第に瞳に光が無くなっていくのを見て、孫市さんが少し慌てたようにアニキに呼びかけている。
鶴姫ちゃんもそんなアニキの意識を繋ぎ止めようと必死に呼んでいる。

 ようやく解毒薬の準備が出来て、アニキにそれを飲ませようとするが、アニキにはもう自力でそれを摂取する力が無い。
口に含むことも出来なくて、ただぼんやりと何処を見ているのか分からない目のまま、光だけが失われていく。

 どうしよう、本当にヤバいんじゃないの?

 誰もがそんな風に思ったところで、鶴姫ちゃんが引っ手繰るようにして孫市さんから解毒薬を奪った。
そしてそれを自分の口に含んで、アニキの口にそのまま流し込んだ。
この光景を、異変に気付いて寄ってきた海賊さんや鶴姫ちゃんの私兵が見ていて、揃っておぉっ、と声を上げる。
ごくり、とアニキの喉が鳴ったのを感じて鶴姫ちゃんが唇を離していたけれども、アニキはそれが分かってるんだろうか。
唇を離した後にアニキはゆっくりと目を閉じてまた気を失ってしまったわけだから。
鶴姫ちゃんは慌ててたけど、孫市さんが大丈夫だと言うと、やっと安心したように今まで堪えていた分の涙を押し出すようにして泣き出した。

 いやぁ〜……鶴姫ちゃんも漢だねぇ〜。つか、何気にアニキとフラグ立ってない?
っていうか、鶴姫ちゃんに口移しで解毒薬飲ませて貰ったとか知ったらどうなることか。
絶対顔赤くして、責任取らなきゃとか言い出して、一人で暴走しそうな気がするぞぉ?

 「孫市姉様」

 そっと鶴姫ちゃんの背を擦っていた孫市さんが、少しばかり厳しい顔をして鶴姫ちゃんに説得を試みる。

 「姫、我々はこの戦を止めなければならない。
……魔王復活を望む者が、ここで命を落とした者達の命と引き換えに、魔王を復活させる儀式を行うつもりでいるらしい。
ここで仮に勝利を収めたとしてもだ。平和な世など訪れ
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