第八十部第五章 秘密兵器その九
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時を待っていた、その艦艇達の中の一隻でだった。少佐の軍服を着た三十代の男が二十代の大尉に狭い艦内で言っていた。
「ではな」
「それではですね」
「今はですね」
「そうだ、今はだ」
まさにと言うのだった。
「待つ、おそらくあと数分でだ」
「命令が来ますね」
「極秘通信でな」
普段の通信は遮断されている、それでこれからというのだ。
「伝えられる」
「では」
「その時にだ」
まさにというのだ。
「攻撃に入る」
「そうなりますね」
「既に攻撃用意は出来ているな」
「はい」
既にとだ、大尉は少佐に答えた。
「全ての魚雷発射管にです」
「魚雷が装填されているな」
「そしてです」
「命令があり次第だな」
「魚雷が目標に発射されます」
即ち目標も既に定められているというのだ。
「目標は気付いていません」
「ではな」
「攻撃命令が下ればですね」
「その目標を狙ってだ」
「魚雷を発射して」
「そしてだ」
そのうえでとだ、少佐は大尉に緊張した顔で述べた。
「攻撃を仕掛けるぞ、その攻撃がだ」
「まさに」
「勝敗を決する」
「そうなりますね」
「正直に言う」
緊張した顔のままでだ、少佐は語った。
「この時が来るのを待っていたが」
「それでもですか」
「緊張している」
表情に出ている通りにというのだ。
「生まれてからな」
「最もですね」
「緊張している、若しもだ」
「ここでしくじれば」
「私は一生後悔する」
そうなるというのだ。
「間違いなくな」
「それは私もです」
大尉もだ、見れば緊張した面持ちになっている。少佐にその顔で言うのだった。
「まことに」
「この時を待っていたな」
「この艦艇に乗り込んだ時から」
乗員になったその特からというのだ。
「まことに」
「この日の為に訓練してきてな」
「ようやく配置に着けました」
「ならな」
「いよいよですが」
「それでもだな」
「緊張してです」
「仕方ないな」
「後はボタンを押せば」
まさにというのだ。
「終わりですね」
「それだけだ、だがな」
「ボタンを押すだけのことがですね」
「今は恐ろしい、ただ攻撃命令を受けてだ」
極秘通信からのそれをというのだ。
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