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竜のもうひとつの瞳
第七十六話
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じゃないのよ。
家康を討てばその後の日本がどうなってもいい? そんなの許されるわけがない。
だって、戦ってのは多くの人の命を犠牲にして、民の幸せを奪うものなのよ?
だから大義名分が必要になるし、戦を起こした以上はその責任を取らなきゃいけない」

 そこまで言って、ようやくかすがも言いたいことを察してくれた。
慶次も今回は分かったみたいで眉間に皺を寄せている。流石にこれで分からなかったら戦力外通告をしたところだったよ。本当に。

 「家康は、自分が天下人になる為に西軍を利用したのよ。
西軍を討てば、その力を認められて天下人に君臨出来る。天下を狙う連中も諦めざるを得ない。
政宗様だって退かざるを得なくなるわ。つまり東軍も、家康を引き立たせる為の駒に過ぎない。
……絆の力で天下を統べる? 全く、大した“絆”だわ」

 絆の力で本当に統べようってんなら、どうしてこれからこんな戦をしようってんだか。
考えてみれば、家康さんの行動も矛盾だらけだ。

 「小十郎、奥州に同盟の打診に来たのは何時の話?」

 「姉上が本能寺に向かわれてすぐのことですが……」

 「その頃って、西軍はどうだったの? 対抗勢力作らなきゃ対応出来ないほどの集団だったの?」

 そう聞いてみたところで小十郎が眉を顰めていた。ということは……やっぱり私の予測が正しいのかもしれない。

 そうなれば、お市の身柄も途端に怪しくなる。
家康さんに託すのが安全だと思っていたけれども、この戦が終わったらどうなることか……
下手をすれば殺されるか、良いように利用されるかのどちらかじゃない?

 「……でも、アイツがそんなこと」

 「……慶次、前田が東軍に組したことを知っているか?」

 かすがの言葉に慶次が驚いた顔をしていた。
そういえば、利家さんが一人で城に詰めていたけど、近寄れないくらいに怖い空気を放ってたっけなぁ……。

 「だって、加賀は中立を保つって」

 「前田利家の奥方が、東軍に人質に取られたらしい。それで東軍として関ヶ原の戦いに参戦することを決めたのだとか」

 流石にこの情報には私も驚いた。まさかそこまでやってるとは思いも寄らなかったんだもん。

 「……家康、アイツ……」

 震える拳で怒りに身を震わせる慶次の肩を叩く。

 「……ぶち壊してやろうか、この戦い」

 「姉上!?」

 「こんな盛大な茶番劇に付き合ってやるのが馬鹿臭くない?
てかさ、家康が天下人になりたいってんならぶっちゃけそれでもいいと思ってるよ。
政宗様にはまだ天下人として立てるだけの力が無いからね。……けど、駒に使われるのは願い下げよ。
アンタもそう思うでしょ?」

 小十郎も口を閉ざし、渋い顔をしている。


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