第七十六話
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らしくて、孫市さんの婆娑羅の力である炎を使って
掻き集めた火薬で塞がれた入口を爆破して出てきたという。いや、ワイルドっすねぇ。
「お前はどうして」
「魔王復活に豊臣が絡んでるって聞いて踏み込んだのよ。
雑賀のアジトに行ったら慶次が誰かに殴られて昏倒してるし、雑賀衆は大阪城に行ったまま帰ってこないって言うし。
大谷が黒幕だってところまでは掴めたんだけど」
そんな私の答えに孫市さんが腕組をして眉間に皺を寄せている。
この様子を見る限りでは、やはりこちら以上の情報を握っていると見て間違い無さそうだ。
「そう、大谷が今回のこの騒動の黒幕だ。そして、関ヶ原の地で起ころうとしている戦いを引き起こした張本人でもある。
……石田は大谷の傀儡に過ぎない」
「大谷は魔王なんざ蘇らせて何をしようってんだ。天下獲りの駒にでもしようってのか?」
小十郎の問いに、孫市さんは眉を顰めて首を振った。
「違う、奴はこの戦の勝敗などどうでもいいのさ。
関ヶ原の戦いで出た死者の魂を使って、魔王復活の儀式を完成させようとしている。
魔王を蘇らせたいのは、この世に不幸を齎したいからだと言っていた」
不幸を? 何でそんなもん齎そうとしてんのよ。皆幸せの方がいいじゃないの。
思わぬ言葉に首を傾げたのを見て、孫市さんが言葉を続ける。
「大谷は、皮膚が溶けて崩れる奇病に罹っているそうだ。
それで心を病み、頑なに人の幸せを憎むようになったと聞く。おそらく、魔王復活の動機はそれだ」
「そんな、個人的な話で? いや、確かに気持ちは分かるよ。
何で自分だけこんな目に、ってのはさ……でも、だからって皆に不幸を齎そうなんてそんな」
筋違いもいいところだろうに。そんな病気に罹ったのは他の人間のせいじゃない。無論、大谷のせいでもないだろう。同情はするけど容認は出来ない。
だってさ、折角関ヶ原の戦いで戦乱の世に終止符を打とうとしてるってのに、戦乱の世以上の苦しみを持ってくるだなんて許せるはずがない。
ふと、そこまで考えてあることが私の頭に浮かんだ。
「……ねぇ、もしかして家康さんは、この戦がどういう目的で仕掛けられたのか知ってるんじゃないのかな」
その言葉に皆が一斉に驚いた顔をして私を見た。
「魔王復活はともかくとしてよ? 西軍の、しかも豊臣の連中が怨恨で戦を起こそうとしてるってのを知ってて東軍作ったんじゃない?」
「それの何がおかしいというのだ」
かすがの問いに、小十郎が眉を顰めている。どうやら私の言いたいことを察してくれたみたいだ。
「おかしいでしょうが。戦にならないように打つ手はいくらでもあったのよ?
大体戦ってのは、そんな個人的な感情で起こしていいもの
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