第七十五話
[1/3]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
夜明け間近にやって来た雑賀衆のアジトは、前に来た時と打って変わってがらんとしていた。
仕掛けてあった罠も外され、アジトを守っている人間もいない。
「我ら、誇り高き雑賀衆〜……ってのも聞こえないわねぇ」
西軍のところにもいないというのならば、何処かにいるとは思うんだけど……
「しゃーない。ちょっとお邪魔させてもらおうか」
とりあえず雑賀のアジト内部に踏み込んでみることにした。
この前アニキと一緒に来た時は外で孫市さんと会ったけど、内部には入らなかったから詳しいことは分からないのよね。
昔来た時も外で待機してたし、中には入らなかったから。
一体どんな風になっているんだろうって思っていたんだけど、内部にも侵入者除けの罠がゴロゴロと設置してあって、
これが普通の城に堂々と仕掛けられてたら嫌だなぁなんて思ってしまう。
そんな私の思いとは裏腹に、小十郎ってばそれを見て必死に勉強してるし。
「……えげつない罠仕掛けるの止めてよ? 味方が引っ掛かったら酷だからさぁ」
「……善処致します」
……おいおい、一体何仕掛ける気でいるのよ。後でしっかり聞いておかないと、とんでもない罠仕掛けそうで恐いわ。
とりあえず一番豪華っぽい部屋に入っていろいろと探ってみるものの、めぼしいものは何も無い。
かすがも既に探っているようで、忍が探して何もないのならば素人の私達に見つかるわけもないだろう。
ならばここは引き上げて、なんて思ってたところで奥の方に何かが転がっているのが見えた。
何となくそれが人の足に見えて入って確かめてみると、そこに慶次が気を失って倒れているのを見つけてしまった。
「ちょ、ちょっと慶次!? しっかりしなって!!」
顔を軽く叩いて呼びかけてみると、慶次が少し呻いた後に目を開いた。
ぱっと見た感じでは特に大きな怪我もなさそうだし、意識が戻ったから良かったとほっと一息吐く。
「……あれ、小夜さん?」
「どうしたの、こんなところで……誰にやられたの?」
慶次は後頭部を押さえてゆっくりと起き上がった。
見れば誰かに殴られたような痕があり、しっかりと瘤になっている。
とりあえずこんなもんで済んで良かった、なんて思っていると、ずかずかとかすがが割り込んで慶次の胸倉をきつく掴んでいた。
「慶次! なかなか戻って来ないと思ったら、一体何をやっていたんだ!!」
「わっ、ご、ごめんよ! ……いや、書状を渡した後にさ、孫市が血相変えて調査をし始めたんだよ
ね。何か織田とは因縁があるみたいでさ、絶対に阻止しなければって言ってて、俺もそれを手伝ってたんだ」
孫市って、早速呼び捨てですかい。全くこの男ときたら女を見れば手を出そうとするんだ
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ