暁 〜小説投稿サイト〜
木の葉詰め合わせ
本編番外編
IF設定
此処ではない他の世界で・肆
[3/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
 鍛錬を続ければ、この男と互角に戦えるまでには成長できるだろうと確信している。

 だからこそ、その時のことを考えると愉快で堪らなくて――気分も浮き立つのだ。

「ふ、ふふふ。よし、今度はもっと早く治癒が出来る様にして、それから……」

 怪我が一瞬で治る様になれば、その分だけ次の動作へと移る動きが速くなる。
 チャクラを一点に集めることで、木遁に頼る事無くても私自身の攻撃力を上げられる様になるかもしれない。
 次に生かすための改善策を指折り数えながら、空を見上げる。
 そうやって次の闘いの戦略を練っていれば、ふと声をかけられた。

「――――貴様は、まるで小さな獣だな」
「……誉めているのか、貶されているのか、さっぱりなんだけど」
「安心しろ、誉めている」

 ――……少なくとも、聖人君子面を浮かべながら戦う奴より、好感が持てる。
 そう言って男は遠くを見やるように視線を彼方へと向ける。
 きっとその茫洋とした眼差しの先では、その誰かの事を思い起こしているのだろう。

「――って、なんだってば、こんなにウキウキしているの、オレ!!」
「なんだ、騒々しい」
「ああもう、こんな所で誘拐犯相手に現を抜かしている場合じゃないのに!! おいこら、誘拐犯!」

 しんみりとした雰囲気を蹴飛ばすような勢いで泥だらけのまま起き上がって、人差し指を男へ向けて突きつける。
 涼しい顔で鍛錬の汗を拭っている男は、気難しい顔のまま私の方を振り返った。

「いい加減、これ外せ!」
「……断る」

 右手首に施された呪印を突きつければ、即刻却下される。ああ、腹立つなあ、この野郎。

「前にも言っただろう。オレの存在を他の人間に知られる訳にはいかない」

 そりゃ、そうだろうよ。
 実際にどこかの誰かに瀕死寸前にまで追い込まれる程、追いつめられたみたいだし。
 ――――けど、だからどうした。

「最初の話し合いでお前は納得した筈だ。私だって“千手柱間”であるということを」

 加えて、この世界にいる“千手柱間”はただ一人で、その“千手柱間”は私じゃない。
 私の愛しい弟と妹、守るべき大事な一族がいる世界は、此処ではない。
 帰らなければいけないというのに、なんでそれを忘れていたのだろう。
 初めて出会う強敵に心躍らせている場合ではなかったのに、何をやっていたんだろう。

「そうだな。だとすれば此処には居ない筈の貴様がいる――その事実がオレに取って好都合だと……分かってはいるな?」
「――……何を企んでいる?」

 幼い子供に対して言い聞かせるような口調に、思わず一歩後ずさった。
 それまでの男の突慳貪な態度が恋しくなる程、初めて聞かされる低く甘い声音に産毛が逆立つ。やばい、何とかして逃げなけ
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ