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木の葉詰め合わせ
本編番外編
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此処ではない他の世界で・肆
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することでいなし、伸ばされた腕へと両手を掛けて、振り向き様に相手の懐に潜り込んでの一本背負い。

「――――っん、ぐ!」

 ところが、掴んでいたはずの腕ごと、男の方へと引き寄せられ――体が宙に浮く。
 唐突な浮遊感に合わせて、地に足が着かない不快感が襲われたかと思うと、男の手によって後方へ放り飛ばされる。
 うわあ。こんなにも楽々持ち上げられるのって、すっごく腹立つ――体重増やそう。
 地へと叩き付けられるのを先に付いた両足で体を支える事で何とか回避するが、ブリッジの体勢から攻撃態勢に移るために、半瞬ロスしてしまう。

 そして、この男はその隙を見逃してくれるような、生易しい相手ではない。

「――〜〜っ!!」

 ブリッジから逆立ちへと体勢を変えようとした私の脇腹に、重い一撃が蹴り込まれる。
 思わず上げそうになった叫びは抑えられたが、どうしても声に成らない悲鳴が上がる。
 そうして容赦の欠片も無く蹴り込まれた一撃の勢いで、私の体は木の幹へと叩き付けられた。

「うっ! ――ごほ、ごほっ! っはぁ……」

 蹴り飛ばされ、背筋に固い物が当たった衝撃に息が詰まる――そのまま数本の木を犠牲にして、ようやく衝撃は収まった。
 ――――ああ、くっそ。この分じゃ、骨の数本は折れているな。
 口の端から滴り落ちた赤い雫を見やって、喉の奥で苦痛の叫びを唸り声としてやり過ごす。

「どうした? ――もう終わりか?」

 背を丸めて怪我をした箇所を抑えている私を冷たい目で見据えながら、男が悠然とした足取りで歩み寄って来る。
 男を睨み返しながら、今頃は内出血で色を変えている服の下の脇腹へと医療忍術を施しておく。どうせ直ぐまた怪我の上書きを行うことになるだろうが、動けなくなって泣き喚くよりもよっぽどマシだ。
 蔑むような口調に応じること無く、無言で背を低くしたまま――地を蹴った。



「ああくそ! 今日こそ一本取れると思ったのにぃ〜〜!!」
「諦めろ、そうなるのは当分先だ」

 泥だらけの汗だらけで地面に大の字で寝転がりながら、悔しさを紛らわせるために大空向けて叫ぶ。
 そうすればからかうというよりも厭味混じりに揶揄する様な声で返されて、唇を歪めた。
 千手の頭領である父上と五本組み手をして二、三本は取れるって言うのに、やっぱりこの男は強い。誘拐生活の何日(あるいは何週間目)くらいから、こうして一日数時間手合わせを繰り返しているが、今の所一本も取れたためしがない。

 悔しい、悔しい、腹立たしい――でも、同時に面白い。
 今まで戦ってきた、手を合わせてきた相手の誰よりも強いこの誘拐犯との組み手が、こんなにも心躍るとは。
 このいけ好かない誘拐犯が追い付けない程の高みにいる――とは考えない。

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