本編番外編
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此処ではない他の世界で・肆
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「――という訳でそろそろここも足が付く。近いうちに拠点を変えるぞ。……わかったか?」
「あー、うん。晩ご飯はビーフシチューがいいんだね。でも私はデミグラスソースなんて作れないから諦めて」
「……貴様、人の話を聞いてなかったようだな」
この間、流れの行商人から安値で仕入れた『どんな相手もこれでイチコロ! らくらく暗殺クッキングpart.1』に目を通しながら適当な返事をすれば、物凄い表情で睨まれていた。
視線だけで人を殺せそうな感じである。でもそんな事気にしない。
この誘拐犯が捕まろうが、殺されようが私にはなんの関係もないし、寧ろ捕まってくれればそれこそ願ったりかなったりだし。
料理本を流し読みしている私の向かいでは、人に作らせておいた昼飯を淡々とした表情で平らげていく男が席に着いている。
男のために用意した昼飯のいなり寿司として作った12個――そのうちの3つ分。
単独では無害なだが、それらを一度に摂取する事によってどんな大男でも一撃でコロリ、な毒を潜ませておいたのだが……結果はやはり惨敗であった。くっそう、腹立つなぁ。
器用に最後の1つの毒入りを避けて次々と安全ないなり寿司を平らげていく男へ、私は恨めし気な目を向けるしかない。
折角、無味無臭の毒薬を3つ食べないと毒としての効力が生まれない様に、手間かけて調合したって言うのに……どうして分かるのかなぁ、ホント。
今の所、九十六戦九十六敗。――全くもって、腹立たしい戦績である。
男と暮らしている間に分かったことのだが、(薄々勘付いてはいたけども)この男は非常に面倒くさい人間だった。
例えば男は私の名を私のものとして呼ぶことは無い。
呼びかけはいつも「貴様」で、よくて「お前」だし、酷い時は「おい」である。
彼にとっての“千手柱間”という人物は善くも悪くもただ一人なのだろう、うん。
まあ、私自身この誘拐犯について知りたいとも思わないし、名を聞こうだなんて欠片も思わないから、おあいこだと言っておこう。
「――つーかさあ、なんでオレは未だにお前と一緒に居るの?」
「……何が言いたい」
気晴らしも兼ねて行っている組み手の合間に、前々から聞きたかった事を問い掛ければ、ぴくりと形のいい眉が動く。
流れるような動きのままにこちらの隙を狙って鋭い一撃を加えて来る様は、腹立つ程見事なものだ。
「――っと、ほっ! いや、もうお前の怪我も治ったし、オレがわざわざお前と一緒にいる必要――っと!?」
「――甘い!」
間一髪で風切り音と共に正拳突きの一撃が耳元を擦れば、拳の風圧によってぶわり、と髪が巻き上がった。
よし、避けてやったぜ――と思っていたら、腹部目掛けて強烈なボディブロー。
――それを一歩後退
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