第二部 1978年
ソ連の長い手
牙城 その2
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
からも、日米、韓米の間にある核の傘と言う物は、虚構でしかない事実が広く知られた」
彼は、左手でグラスを掴む
「ある時、仏大統領が米国に出向き、ホワイトハウスに真意を訪ねた話は知っておろう」
男は、机の上に有る「ジダン」の紙箱を開け、フィルター付きのタバコを抜き出す
「キューバ危機で名前を売った若造か……」
紙巻きタバコに火を点けると、彼の言葉を繋ぐ
「あの魚雷艇乗り上がりの大統領は、終ぞ核防衛計画をフランスの老元帥に明かせなかった」
紫煙を燻らせながら、熱っぽく語った
「それはなぜか、簡単な事さ。そのような物は最初から無いのだから約束などできる筈もない。
ボンの連中も同じことを思い、嘆いているであろう」
タバコを片手に、室内をゆっくり歩き始める
「俺はボンとの統一が成った際、核の問題は避けられぬと思っている。
甘い連中は中立国が出来ると思っているが、そんなのは絵空事だ」
「既にボンの政権自身は発足以来米国の傀儡であり、対ソ姿勢を明確にしている。
我が党も既に先頃の事件で、ソ連とは決別状態になった……」
彼はグラスを置くと、立ち上がり、一言尋ねる
「で、どうするのかね……。
核濃縮のノウハウも無いうちからその様な空論を述べるのは……」
タバコを右手より左手に持ち替え、一口吸いこむ
ゆっくりと紫煙を漂わせながら、答えた
「なあ、話は変わるが、西で環境問題活動家という連中が暴れ回ってるのは知っていよう」
彼は、両腕をズボンのマフポケットに入れた侭、男の話に聞き入る
「あの無政府主義者のことか」
男は下を向き、机の上に有るグラスを右手で掴む
其のまま、ウイスキーを一口含む
「俺がブル選をやりたいのは、この国が社会主義で持たぬ事もある……。
だが核利用の道筋を作り、ガキどもに残してやりたいからだよ……。
環境活動家の中に入り込み、石炭発電より綺麗な核利用という宣伝文句を広める。
奴等は排ガス規制や大気汚染、公害を問題にしてるから、取り込みやすい」
グラスを静かに置く
「放射能廃棄物の処理はどうするのかね」
男は、彼の方を振り向く
「その辺は米英の先進的な手法を取り入れる。
原子力業界は、国際金融資本の連中が仕切っている。
奴等に金とノウハウを提供させ、我等はそこから学べばよい」
安心したかのように笑みを浮かべた
ポツダム 4月29日 5時
早暁のサンスーシ宮殿、庭園内を軍服姿の男達が散策していた
参謀本部にほど近いこの場所で、密議がなされていた
参加者は、国防省トップの軍官僚数名……
参謀次長の地位にあるハイム少将が問う
「赤軍参謀総長を担ぐと言う案、些か拙速ではないかね」
男は、最年少の将官を諭すよう
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ