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イベリス
第四十八話 東京という街その十

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「だったらな」
「余計に信用出来ないのね」
「そうだ、だからいいな」
「こうした連中とは関わらないことね」
「嫌われて当然だ」
 父は今度は吐き捨てる様にして言った。
「薄汚くて卑怯だからな」
「そうした人は嫌われるわね」
「そして信用もされないんだ」
「最低の評価ね」
「人間としてな」
 実際にというのだ。
「だからだ」
「近寄らせないことね」
「相手にするんじゃない」
「わかったわ、そして私もね」
 咲はそうした連中を話を聞いたうえで心から嫌悪し軽蔑した、だからこそ深く考えそのうえでこうも言った。
「そんな連中にはね」
「なりたくないな」
「何があってもね」
「そう思うことだ、自分が嫌だと思った相手にはな」
「ならないことね」
「反面教師にしてだ」
 そうしてというのだ。
「そうはならない様にな」
「やっていくことね」
「そうだ、だからな」
「そうした連中にはならない為には」
「そうした連中を常に意識するんだ」
 そうすべきだというのだ。
「ああはなるまいとな」
「思って」
「そしてだ」
 そのうえでというのだ。
「やっていくことだ、いいな」
「わかったわ」
 咲は確かな顔と声で答えた。
「そのことはね」
「覚えておくな」
「そうするわ、最低な連中と思ったから」
「そう思ったらな」
 それならというのだ。
「もうだ」
「ならないことね」
「反面教師も必要なんだ」
「ああはなるまいね」
「そう思う相手がな」
「悪い意味で手本ね」
「そういうことだ、しかし本当にな」 
 父は苦い顔で述べた。
「そんな連中はお父さんの会社にも欲しくないな」
「お仕事出来ても?」
「問題外だ」
 父の返事は忌々し気なものだった。
「平気で裏切って責任から逃げる様ならな」
「お仕事が出来ても」
「そんな奴はな」
 それこそというのだ。
「絶対に信用出来ないと言ったな」
「信用出来ないとなのね」
「若し仕事を失敗したらな」
 その時はというのだ。
「逃げて後は知らないだからな」
「そんな人部活でも無理でしょ」
 母も言ってきた。
「アルバイトでも」
「そう言われたら」
 咲も頷いた。
「そうね」
「そうでしょ」
「ええ、何か出来ても」 
 それでもというのだ。
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