第三章
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「それだけは」
「じゃあ僕でよければお話させてもらいます」
「具体的に何をすればいいか」
「どれだけ」
「それならお願いするわ」
「僕も汗を流しますので」
こう言ってだった。
愛野はこの日から彩夏に具体的に何をどれだけすればいいかメニューを考えて持って来て話してだった。
自分も身体を動かした、彩夏は彼の運動を見て言った。
「凄いわね」
「そうですか?」
「私の何倍も身体動かしてるじゃない」
「現役だった頃はもっとです」
「そうなの」
「まあ僕現役時代短かったですが」
自分からこう言った。
「そうですが」
「二十五で引退だったわね」
「二年前でしたね」
「それでうちに来たのね」
「スポンサーでもあったんで」
このこともあってというのだ。
「採用してもらったんですが」
「それで私のところに来たのね」
「そうです」
「そうよね、何かね」
ストレッチの手伝いをしてもらいつつだった。
彩夏は深く考え自省する顔になった、そうして愛野に話した。
「私いつも愛野君怒ってるけれど」
「仕事だから当然ですよね」
「そんなに私も出来てないし」
「そうですか?」
「昔から運動は全く駄目なのよ」
自分で言うのだった。
「こんな調子で。愛野君がいないとね」
「僕がですか」
「こんなに出来ないわ、そう思うと」
自省した顔のままで言うのだった。
「威張れないわね、今まできついこと言って御免なさい」
「いいですよ、お仕事ですから」
「そうはいかないわ、これからは態度をあらためるわ」
こう言うのだった。
「お仕事もね、それでジムではこれからもね」
「こうしてですか」
「ええ、何かと教えてね」
脚を開き前に屈む時に後ろから背中を押してくれている愛野に話した。
「そうしてね」
「はい、そうさせてもらいます」
愛野は彩夏に笑顔で答えた、そうしてだった。
この日も彼女のサポートをして教えもした、彩夏は実際に仕事の時彼にこれまでよりずっと優しく接する様になった。
二人は職場でも顔を合わせジムでもそうしていってだった。
やがて交際し結婚まで至った、そして二人で仲のいい家庭を築いていった。
ジムでは立場逆転 完
2022・4・22
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