第十九話 三つ葉のクローバーその十
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「食べていたらしいわ」
「そうだったの?」
「戦争行った人で傷痍軍人で昭和五十年前に亡くなったらしいけれど」
「その人はなのね」
「免許なかったけれどね」
それでもというのだ。
「その人ちゃんとね」
「毒のある場所わかってたのね」
「河豚のね」
こう一華に話した。
「そうだったのよ」
「それは凄いわね」
「河豚買うこと自体は禁止されてないから」
法律でというのだ。
「だからね」
「それでなのね」
「お店で河豚買って」
「ご自身で調理して」
「それで食べていたそうよ」
「そうだったのね」
「免許は持ってなかったけれど」
それでもというのだ。
「そうしてたそうよ」
「そんな人もいたのね」
「昔はね。河豚は種類によって毒のある場所違うけれどね」
かな恵はこのことも話した。
「トラフグとアカメフグ、他の河豚でもね」
「内臓にあるのよね」
「けれど種類によってね」
「内臓でもある場所とない場所あるの」
「皮にある種類もあるのよ」
こちらにもというのだ。
「実はね」
「そうなのね」
「それでその人はね」
「どの種類の河豚の何処に毒があるかわかっていて」
「それでね」
「調理してなの」
「ご自身で食べていたのよ」
一華にここまでは普通に話した、だが。
かな恵は不意に暗く悲しい顔になった、それで視線を一瞬だが横にやってからこう言ったのだった。
「ただね」
「ただ?」
「この人戦争で傷痍軍人になって」
「それ最初に言ったわね」
「ヒロポンで痛み紛らわせていてね」
「ああ、覚醒剤ね」
ヒロポンと聞いて一華はすぐにそれだとわかった。
「昔は合法だったのよね」
「それで煙草屋さんとかでも売ってたのよ」
「そうだったわね」
「それで一時中毒になっていて」
「けれど戻ったのよね」
「それでも傷痍軍人で」
身体に怪我を負ってそれが障害になってというのだ。
「中毒にもなったから」
「それでなの」
「傷痍軍人の年金で暮らしていても」
「それでもだったの」
「結婚したいって人が来てもね」
「結婚しなかったの」
「もう自分は障害持って中毒にもなった廃人だって」
悲しい顔のまま話した。
「そう言ってね」
「断わったのね」
「折角のお話をね」
「そんなことがあったの」
「しかも終戦直後弟さんが喧嘩を止めに入って」
かな恵はさらに話した。
「刺されてね」
「お亡くなりになったの」
「そのこともあったし妹さんが五人おられたけれど」
「長男さんだったの」
「七人兄妹の一番上だったの」
「それで妹さんが五人ね」
「どの人も自分だけで随分酷い人達だったらしくて」
そうした家庭環境でというのだ。
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