第一章
[2]次話
鬼婆の真実
その街には昔ながらの駄菓子屋がある、もう日本にはないと言う者がいるがそれでもそこにはある。
店の主は滝沢雛という、九十歳になろうとする老婆であり腰は少し曲がり髪の毛は真っ白なざんばらであり顔は細長く皺だらけだ。
小柄で目は小さい、だがそのざんばら髪から子供達は鬼婆と言われていた。
「婆ちゃんめっちゃ優しいけれどな」
「俺達にいつもな」
「けれど何か皆言うよな」
「鬼婆ってな」
「昔からだよ」
老婆の方から店にいる子供達に言って来た、店の内観も昭和三十年代を思わせるものであり商品もそうした懐かしい感じの駄菓子やおもちゃである。その独特の風情と彼女の接客から大人も来たりして店は結構繁盛している。
「あたしはそう言われてるんだよ」
「えっ、そうなんだ」
「婆ちゃん昔から言われてるんだ」
「そうなんだ」
「そうだよ、このお店は婆ちゃんの祖母ちゃんがはじめてね」
そうしてというのだ。
「その祖母ちゃんも言われてたんだよ」
「鬼婆ってか」
「その頃からか」
「そう言われてたんだな」
「そうだったんだな」
「そうだよ、祖母ちゃんがお店をはじめて」
そうなってというのだ。
「そこからだよ」
「言われてたのか」
「婆ちゃんの祖母ちゃんから」
「その時からか」
「そうだよ、婆ちゃんの祖母ちゃんが若い頃にはじめてね」
この店をというのだ。
「その時からだよ」
「鬼婆って言われてたんだな」
「そうなんだな」
「婆ちゃんの祖母ちゃんが若い頃からか」
「この店はじめた時からか」
「そうだよ、そして婆ちゃんの母ちゃんが店を継いでね」
そうなってというのだ。
「やっぱり言われてそしてこの婆ちゃんもだよ」
「言われてるよな」
「今だってな」
「そうだよな」
「ずっとざんばら髪でこの姿だからね」
老婆は笑って話した。
「言われてるんだよ」
「そうなんだな」
「何で言われてるかわからなかったけれど」
「そういうことか」
「昔からなんだな」
「そうだよ、この仇名はね」
鬼婆というそれはというのだ。
「あたしだけじゃなくて祖母ちゃんの頃からなんだよ」
「そうなんだな」
「それで言われてるんだな」
「昔から」
「そうだよ」
店にいる子供達に笑顔で話した、そしてだった。
子供達に優しく接していった、そうして閉店の時間になるとだった。
店を閉めて家の中に入った、それから風呂に入って夕食の用意をしているとやたら身体の大きな逞しい男が家に戻ってきた。
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