第二章
[8]前話
「いないな」
「このジムどころか全体でな」
「そうだな」
「今の下着はトランクスかボクサーなんだな」
海里はあらためて言った。
「そうなんだな」
「まあそうだな」
「それでボクサーの勢いがあるな」
「何かトランクスよりいいかもな」
「おう、ボクサーいいぞ」
友人達の間でこうした話も為された、海里は服を着ながら彼等のそうした話を聞いてから自動販売機でスポーツドリンクを買って飲んでジムを後にした。
そうして実家の寺に帰ると。
祖父の先代住職で今は彼の息子で海里の父心里にその座を譲っている山里が居間でカタログを読んでいた、そのカタログは仏具のもので僧衣も載っていたが。
その中に褌もあった、祖父は赤褌を見て言っていた。
「これはいいか」
「祖父ちゃん褌買うのかよ」
「うむ、ずっとトランクスだったがな」
それでもというのだ。
「褌もな」
「いいっていうんだな」
「日本の男でしかも僧衣という日本の服をいつも着るのならな」
事実今彼は僧衣姿である、ただし宗派の関係で頭は剃っていない。
「それならな」
「下着は褌か」
「そうだと思う様になってきたからな」
それでというのだ。
「わしも今考えておる」
「褌か」
「そうだ、お前はどう思う」
「いや、いきなり言われてもな」
孫は居間で自分のお茶を煎れて祖父にもそうして出しながら言った。
「ちょっと言えないな」
「そうなのか」
「ああ、しかし褌はか」
「僧衣を着ているとな」
「ありか」
「昔は皆そうだったしな」
「僧衣なら俺も寺継ぐしな」
将来それが決まっている、だから大学も自分の家の宗派の大学の宗教学科で学んできて今は家で寺の仕事をしている。
「いつも着る様になるな」
「だったら考えておけ」
「褌もか」
「そうだ、風情もあっていいしな」
「そうなんだな」
この時はただ祖父の話を聞いて言うだけだった、だが。
それから時々褌について考える様になった、そのうえでジムに通い色々な男の下着を見て思うのだった。
「下着っていっても色々でどうかとは言えないな」
「何か達観した感じだな」
「何かあったのか?」
「ああ、何でもないさ」
共に汗を流す友人達に笑顔で返した、そうしてだった。
風呂を出た後でトランクスを穿いた、この時彼はトランクスがいいと思いつつもボクサーや褌も悪くないと考えていた。そして男の下着は色々あって面白いものだとも思ったのだった。
正しい男の下着 完
2022・4・20
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