第119話『3つの戦場』
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がないのも事実。つまり、『弾道を予知して迎撃する』というのが晴登の結論だ。弾道さえわかれば、"鎌鼬"で防ぐこともできるかもしれない。
「だったら、集中──!」
"予知"の発動条件はわからないが、とりあえず勝つために極限まで集中していたのは確か。だから集中力を高め、ついでに目に全神経を注ぐ。あの"風の流れ"をもう一度視たいと、ただその想いで。
「──視えた!」
集中してから数秒後、晴登の胸元に向かう一筋の風が視えた。流れの元を辿ると、こちらに銃の照準を向けた重装兵を見つけた。
距離は50m程か。予知しなければ気づかなかっただろう。間一髪。
弾道も風を視てわかった。ちょうど晴登の心臓を狙って……いや、貫通して結月に当てることも狙っているらしい。
「狙われるのは怖いけど、弾道がわかれば防げる……!」
標的にされているとわかって心臓が波打つが、落ち着けと自分に言い聞かす。なに、後は"鎌鼬"を弾道上に撃つだけ。それで狙撃は防げる。
「"鎌鼬"!」
晴登は右手を振るい、風の刃を放つ。予知では、あとコンマ数秒後には発砲されていた。ならばあらかじめ"鎌鼬"を撃たないと間に合わない。
──発砲音。遠くに見える銃が火花を散らした。銃弾はすぐにこちらに届くだろう。
だが"鎌鼬"は既に放っている。途中で弾丸を斬るなり弾道を反らすなりしてくれればそれで良い。良いのだ。
「……あ」
──だが晴登の"鎌鼬"は、銃弾に当たらなかった。
「何で……」
当たらなかったのか。この短い時間で、晴登が呟けたのはこの疑問詞だけだった。
理由は明白。"鎌鼬"が弾道に沿っていなかった。それだけのことである。銃弾を刀で斬るという達人技は、弾を見切っても素人には無理だったというだけの話なのだ。
銃弾が眼前へと迫る中、まるで時が止まったかのような錯覚に陥った。何の音も聴こえず、身動き一つとることができない。
このままだと、心臓を射抜かれた晴登は間違いなく即死。晴登を貫通した弾を受けた結月は耐えるが、集中が切れて天井の氷は壊れ、この戦場そのものが謎の雨によって蹂躙されることになる。──そう、予知で視えた。
「……っ!」
晴登にはもう、何をすることもできないし、その時間も残されていない。唯一反射的にやったことと言えば、目を瞑り、身体に力を入れて銃弾の衝撃に備えたぐらい。
──ああ、ここで死ぬのか。
こんな感情になったのは2度目だが、今回こそ本当なのだと思う。だって予知までしたんだから、これで違ったらもうこの力は信用できなくなってしまう。まぁ、的中率100%の占いなんて聞いたこともないから、予知ってそういうものなのかもしれないけど
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