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真のヒーロー
第一章

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               真のヒーロー
 赤井市太郎は担任に進路を聞かれた時にこう言った。
「航行だけは出ないと駄目ですね」
「やっぱりその方がいいぞ」
 眼鏡をかけて面長の顔と七三分けの髪型の中年男性の痰飲は収まりの悪い赤っぽい髪の毛にごつごつした細面と小さな目と眉を持つ一七八程の背の彼に言った。
「やっぱりな」
「じゃあ夜学行きながらです」
 赤井は担任に答えた。
「働きます」
「どうしてもか」
「うち親がいないですから」
 父親も母親もだ、遊び人の彼等は蒸発してしまったのだ。
「それで弟も妹もまだ子供なんで」
「君が働いてか」
「あいつ等養ってです」
「学校に通うか」
「そうします」
「いいのか?生活保護もあるが」
 担任は彼にこのことを話した。
「それで暮らしていけるぞ」
「俺よりもっと困ってる人いますよね」
 赤井は担任のその言葉に少し苦笑いになって返した。
「ですから」
「それでか」
「はい、俺が働いて」
「そうしてか」
「弟や妹育てます」
「大変だけれどいいか」
「そんなのわかってます、じゃあそうしていきます」
 こう言ってだった。
 赤井は夜間高校に通いながら働きそれで弟や妹を育てていった。弟の幸二も妹の雪菜もまだ子供だったが。
 家事もしてだった、彼は彼等を養っていった。
「お前等に苦労はさせないぞ」
「うん、けれどね」
「お兄ちゃん大変よね」
 二人は食事も作ってくれる兄に家の中で話した。家は粗末な古いアパートだ。
「だから私達もね」
「家事してアルバイトするよ」
「そんなのはいい、俺の稼ぎでやっていけてるんだ」
 昼は建設業で働いている、肉体労働だ。
「だからな」
「いいんだ」
「私達は何をしなくても」
「俺のことは心配するな、高校だって行けてるしな」
 彼等に自分の学校のことも話した。
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