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妖精のサイヤ人
第十一話:愛すべき家族に祝福を
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「!!」

雷撃を纏う拳は掠り傷を作ることができず、攻撃したラクサスの胴体にある肺にセイラが放つ強烈な掌底うちが当たる。
一瞬意識を飛びかけるラクサスであったが、片手でセイラの手を掴み、もう一つの手に収束されていた魔力を解放するように振り下ろした。

「へっ……!!落ちろォッ!!!!」

曇り空から魔法でセイラと諸共に使用者であるラクサスも巻き込み落雷を発動した。
ラクサスは雷の滅竜魔導士であり、本来ならば自然と魔法による雷を食すことで力を一時的なパワーアップや回復を可能とするが…自身の魔力で放たれる雷を食べることができない。
滅竜魔導士はその魔法属性に関する''食事''を、ラクサスやその周囲は知らない。
何せ、彼らの周りに滅竜魔法を扱う魔導士は居なかったのだから。

自身を巻き込む魔法を使ってセイラに確かなダメージを与えることができた、とラクサスは確信するも落雷の直撃により発生した煙の中から伸びてくる白い手に気づくには、一歩遅かった。

「分からないのですか、今の貴方様と(わたくし)の実力は天と地ほどの差があるのです――こんな雷でさえ、(わたくし)にとっては電気マッサージと変わらない」

その白い手はラクサスの首を掴み片手で持ち上げる。
自身の魔法は強力だと自負しているラクサスにとって、雷による魔法が通用しないことは初めてのことだった。
自身の魔法が通じないのならどうすればいいのか、と思考を巡らせようとしたラクサスにトドメをささんばかりにセイラの腕力を上げて絞め殺そうとする。
 
「ぐっあっ…!!!」

「そもそも、(わたくし)は貴方様に何も言っていませんでしたが…もしやネロさまとご友人として助太刀しようとしたのな浅はかです。 要は――邪魔です」

弟の友人と名乗ったこの少年に対して、彼女の赤い目はまるで闇のように深くして息の根を止めようとする。

「かめはめ波!!!」

しかし青い光を掌に収束したまま接近したネロによって制止される。
己が好む技でラクサスを巻き込まない位置まで接近して青く眩い閃光を撃ち込んだ。
かめはめ波を食らった際腕力が抜けたのか掴んでいた手はラクサスを離してしまう。
その瞬間を狙っていたネロはラクサスを抱き抱えてその場からすぐさま離れる。

「ラクサス!!すまねえ…大丈夫か!?」

「う…るせえ…平気だ…ゲホッ」

先ほどよりも気力がないラクサスを枯れ木に凭らせる。
未だにネロは混乱したままだったが、愛しき家族が友達に凶行を実行しようとする場面を目にすれば身体が勝手に動いてしまった。
まだ姉と戦うことを覚悟しないままの救出したが、そのゆっくり覚悟する時間を与える気はないらしい。


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