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魔法使い×あさき☆彡
第二十ニ章 そう思うなら、それでも構わない
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 それは、視界の記憶であった。
 それは、感覚の記憶であった。

 浮かんでいる。

 満ちている、羊水の中。
 そこにいる。

 水泡の向こう。
 白衣姿の男女が、なにか作業に没頭している。

 時折ふらりと現れる、グレーのスーツ姿が一人。
 いつも楽しげに、こちらへと近寄ってくる。
 こちらへと、顔を近付けてくる。
 にんまりとした笑顔で、覗き込んでくる。
 凹レンズでぐんにゃり歪んだ笑顔で。

 こぽこぽ、水泡。
 小さな泡。
 時折、大きな泡。
 人工の羊水は満ちて、ただ、そこにある。
 ふわり、ゆらり、そこに浮かんでいる。微かに揺れている。

 なにをしているのだろうか。
 そんな疑問も、なかった。
 そんな思考力など、なかった。

 細胞。

 わたしは誰だ、というよりは、わたしとは、なんだ。なんだ。
 ただ、眺めている。
 ありのままを、見つめている。
 ゆらゆら、揺れる、視界の先に。
 ゆらゆら、揺れる、意識の先に。

 それは、魂の記憶。
 それは、肉体の記憶。
 骨の記憶。
 皮膚の記憶。
 臓器の記憶。
 細胞の記憶。
 分子、原子、クォークの記憶。

 友に、家族に、恋人に、仲間に、同僚に、組織に、主人に、主君に、家来に、魂の底から震えるほどの裏切りを受けて、生命を終わらせられることになった記憶、慟哭、怒り、狂い、呪い、激情。
 無数、の
 お、びた、だし、い
 鳥肌、の、立つ、ような
 絶叫、に、口、が、裂け、そ、うな、ほど



 まだ乳を求める幼さであったのに、臓器の売人に売られた。
 実の母と、その恋人によって。
 貧しさが故?
 否。
 ただ遊びたいために。
 派手な生活を送りたいために。
 男にもっと好かれたいために。
 聞かされたのは、聞いてしまったのは、解体のために殺される、その直前だった。
 哀れみから口を滑らせたか、幼い故まだ言葉解せぬと思ったか、死にゆく者へ隠す必要もなしと思ったか。
 呪い、届かぬと思うのか。
 死者に、呪いなしと思うのか。



 病弱だった娘。
 窓辺から、ささやかに咲いている花を見ること、ただそれだけが楽しみだった。
 何故、首を刎ねられなければならなかったのか。
 一体、なにをした?
 みなを救うためだから、と、もともと儚いその生命を、喜んで贄に差し出そうとした身であるというのに。魂であるというのに。
 何故、引き回され、石を投げられ、杭を打ち込まれ、晒し首にならなければならなかったのか。
 死んでなお、唾を吐き捨てられなければならなかったのか。
 何故だ。
 何故だ!



 もう十人も殺しているのに。
 何故、
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