第二十ニ章 そう思うなら、それでも構わない
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み以下とは思わない。……わざわざ最高の存在であるきみを作り出して置きながら、我ながら矛盾したことをいっているとは思うが、真実を語っているつもりだ」
「わけが……分からんわ」
ぼそり、治奈が口を開いた。
完全に置いてきぼりを食らい、少しでも付いていこう認識しようという、無意識の呟きであろうか。
リヒト所長、至垂徳柳は語り始める。
その、ままならぬが故に宿るもののあった、理由を。
リヒト研究班にて、莫大なる魔道の力を持った女性型の合成人間を魔道器と命名し、魔道器開発プロジェクトが発足されたこと。
至垂自身も、その魔道器開発プロジェクトによって生み出された生物であること。
プロジェクトの目的は、二つ。
人間に代わっての、魔道器によるヴァイスタの撲滅。
「絶対世界」の解明。
身体は大きかったがまだ幼い魔道器である至垂徳柳に対し、様々な実験が行われた。
そんな中、ある科学者メンバーの、好奇心やいたずら心が暴走して、秘密裏に野心が植え込まれた。脳細胞培養に手を加えたり、その後の情操教育などによって。
何故、そのようなことをしたのか。
人造人間が野心を抱いたならば、どうなるか。
それを知りたいという、単純な興味であったのかも知れない。
そうかどうかは、もう永遠に分からないことであるが。
大きく育った肉体、野心と知恵、罪悪感の欠如が生むのは、科学者や幹部、自分の気に食わない者の暗殺であった。
野心を植え付けた当の科学者も、まさか自分が殺されるなどとは思ってもいなかっただろう。
至垂の、裏でのそうした行動、つまり暗殺は、誰にも知られることはなかった。
魔道係数をまるで変化させることなく魔法を使えるという、初期型の弱い魔道器であるが故の自分の特性を、よく把握していたからである。
表向きとしては非常に従順であったため、魔道器だからこそ魔道器が分かるはずという理由でリヒトの職員になった。
実験体、かつ研究員として。
魔道器プロジェクトに係る者は、ごく少数。
つまり至垂を魔道器であると知る者も少数。
至垂は、ある者は事故に見せて殺し、ある者は記憶を操作し、自分を知る者をみな葬って、完全に人間として溶け込み、リヒトの中で足場を固めていった。
リヒトという、まだメンシュヴェルトから独立したばかりの小さな組織の中である。
成り上がっていくことに、さしたる時間はかからなかった。
罪悪感など、なかった。
あるはずがなかった。
そういうふうに作った方が悪いのだ。
そもそも、勝手に生み出しておいて勝手なことをいうなという話である。
「だが、土台が土台だ。わたしは、キマイラとして|超《オル
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