第二十ニ章 そう思うなら、それでも構わない
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た筋肉に関しては。
大柄な女性が、徹底的に鍛え抜いたというのならば。
でも確かに、くびれのまるでないその腰は、すらりとした大人の女性としては不自然で、
でも、そうであれば、胸に筋肉とは別の脂肪の隆起が二つあるというのもまた、不自然で。
極め付けは……
顔を真っ赤にしたアサキと治奈の視線が、揃ってちらりとその極め付けへと向けられた。
「まあ、あるものがないということで、一応の女型では、あるようなのだがね。一応のね、DNA的にもね。実際、卵巣だってあるし」
「い、い、一応の、って……」
別に、日本語の細かいところを質したかったわけではない。
ただ、この異様なムードの中でアサキの気持ちはすっかり動転してしまっており、なんとなくオウム返し的に尋ねていただけだ。
だけど、その問いに、よくぞ聞いたとばかり、すぐ返事がきた。
「わたしも、キマイラだということだ。魔道器としては初期型のね」
「え……」
アサキの身体は、表情は、すっかり硬直してしまっていた。
至垂は、楽しげに、でもほんの少しだけ恥ずかしそうに、笑み、言葉を続ける。
「まだ、つたない技術だったから。そんな土台であるから、改良も、合成も、あまり受け付けず。……開発初期で、容姿は二の次とはいえ、女としては、まあ醜過ぎるよなあ」
ははっ、と笑った。
「そ、そんな……」
「なにがそんなだ? きみがいて、さっきのキマイラたちがいる。その初期型が存在したら、おかしいのかい?」
おかしくは、ない。
でも……
自分は、作られたという記憶、合成に使われた人間たちの記憶がある。それは、思い出してしまったからだ。
魔法にぼかされていないはっきりとした記憶がある以上、自分がキマイラであることに疑いの余地はない。
ただ、その記憶の中の彼、いや、彼女に、キマイラとしての振る舞いや、周囲からの扱いはない。
その頃、既に至垂は、リヒトの副所長であり、技術者だった。
至垂のことだけでなく、先ほど戦ったキマイラの魔法使いにしても、キマイラであると今さっき聞かされただけ。
つまりアサキには、キマイラとして認識している他人など、誰一人いないのだ。
当たり前だ。
自分のことすらも、つい先ほど認識したばかりなのだから。
キマイラというものの存在を知ったばかりなのだから。
そこを突然に、わたしもキマイラだ魔道器だといわれても、すんなり飲み込るはずがない。
そんなアサキをどう思ったかなんにも思っていないのか、全裸を晒したまま至垂は続ける。
「初期型であるが故、容姿はこんなだし、魔道器としての資質も低い。だがね、ままならぬが故に宿るものもあるんだ。だから初期型とはいえ、き
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